サンボマスターの代表曲「できっこないをやらなくちゃ」は、聴く人を勇気づけるポジティブな歌詞と熱いメロディーが魅力の楽曲です。カラオケでも定番の盛り上げソングですが、実際に歌ってみると「サビが高くて声が出ない」「喉がすぐに疲れてしまう」と感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「できっこないをやらなくちゃ」の音域を詳しく分析し、ボイトレの観点からスムーズに歌いこなすためのテクニックを解説します。地声の最高音や最低音の把握はもちろん、高いキーをパワフルに響かせるための発声のコツまで、初心者の方にも分かりやすくお伝えします。
音域の壁を乗り越えて、自分らしく情熱的にこの曲を歌い上げたいという方は、ぜひ最後までチェックしてみてください。ボイストレーニングのプロの視点から、あなたの歌唱力を引き出す具体的なアドバイスをまとめています。
「できっこないをやらなくちゃ」の音域と歌唱難易度の基本データ

「できっこないをやらなくちゃ」を攻略するためには、まずその楽曲が持つ物理的なスペックを理解することが重要です。サンボマスターのボーカル・山口隆さんの歌声は、非常にパワフルで情緒的ですが、実は音域そのものも男性にとってはかなり高めに設定されています。
「できっこないをやらなくちゃ」の全体音域と最高音・最低音
この楽曲の音域は、地声最低音がmid1E(E3)、地声最高音がhiB(B4)となっています。一般的なJ-POPの男性曲と比較しても、最高音が「hiB」というのはかなり高い部類に入ります。さらに、この最高音がサビの中で何度も繰り返し登場するため、瞬間的な高音だけでなく持続的なスタミナも要求されます。
最低音の「mid1E」はAメロの低いフレーズで登場しますが、男性の平均的な音域であればそれほど苦労する低さではありません。しかし、そこから一気にサビで2オクターブ近く音を跳ね上げなければならないため、広い音域をコントロールする柔軟な声帯の使い方が鍵となります。
女性が原曲キーで歌う場合、低音域がかなり低く感じられるはずです。多くの女性にとって「mid1E」は地声の限界に近い低さになるため、声をしっかり鳴らすのが難しくなります。そのため、女性が歌う際はキーを4〜6程度上げることで、より歌いやすいレンジに調整することをおすすめします。
男性の平均音域と比較した難易度レベル
一般的な成人男性の地声の限界は「mid2G(G4)」あたりと言われています。これに対し、本楽曲の最高音はさらに2音高い「hiB」です。しかも、叫ぶような熱量を持たせつつ、音程もしっかりキープしなければならないため、難易度は非常に高いといえるでしょう。
単に高い音が出るだけでなく、サンボマスター特有の「エモーショナルな響き」を出すためには、喉を絞めずに共鳴腔(きょうめいこう)を広く使う技術が必要です。ただ声を張り上げるだけでは、2番に入る頃には喉が枯れてしまい、最後まで歌い切ることができなくなります。
特に後半の盛り上がりでは、ボーカルの熱量が最高潮に達します。アドリブ的な要素も含まれるため、リズムに遅れないように言葉を詰め込みながら、高いピッチを維持する能力が問われます。初心者の方は、まずはこの「hiB」を楽に出せるようにトレーニングすることから始めましょう。
カラオケで歌う際のキー調整の目安
自分の音域に自信がない場合や、喉への負担を抑えたい場合は、無理をせずキーを変更することが上達への近道です。男性の場合は、キーを「-2」から「-3」に下げることで、サビの最高音が「mid2G#」や「mid2G」付近になり、格段に歌いやすくなります。
逆に、高い声に自信がある方でも、あえてキーを下げて歌うことで、原曲の山口さんのような「厚みのある太い声」を再現しやすくなるというメリットがあります。声が細くなってしまう場合は、少しキーを下げて、お腹からの圧力をしっかりかけて歌ってみるのが効果的です。
【音域まとめ】
●地声最低音:mid1E(E3)
●地声最高音:hiB(B4)
●おすすめ調整(男性):-2 〜 -3
●おすすめ調整(女性):+4 〜 +6
地声の最高音と最低音をセクション別に詳しく分析

曲全体の音域が把握できたら、次は各セクション(Aメロ、Bメロ、サビ)でどのような音の動きがあるのかを見ていきましょう。この曲は、静かな立ち上がりから爆発的なサビへと繋がる構成になっており、それぞれのパートで声の使い分けが求められます。
Aメロ:低音域での安定感と語りかけるような表現
Aメロでは、この曲の最低音である「mid1E」が登場します。「悲しみに心をまかせちゃだめだよ」といったフレーズで、低い音が連続します。ここでは無理に声を張ろうとせず、胸の響き(チェストボイス)を意識して、言葉を一つひとつ丁寧に置いていくように歌いましょう。
ボイトレの観点では、低音域を安定させるためには「喉を下げすぎないこと」がポイントです。低音を出そうとして顎を引いたり喉を圧迫したりすると、かえって声がこもってしまいます。リラックスした状態で、息を多めに混ぜて歌うと、山口さんのような温かみのある歌声に近づきます。
また、Aメロはリズムが比較的ゆったりしていますが、言葉のニュアンスが非常に大切です。歌詞の内容を自分に言い聞かせるように、語るようなスタイルで歌い始めると、後のサビとのコントラストが際立ち、聴き手を引き込むことができます。
Bメロ:高音への助走と期待感を高めるクレッシェンド
Bメロでは徐々に音程が上がっていき、サビに向けてのエネルギーを溜める役割を担います。「灯りをともそう」などのフレーズでは、中音域がメインとなります。ここでは、低音のチェストボイスから高音のヘッドボイスへと繋ぐための「ミドルボイス」的な感覚が必要になります。
音が上がっていくにつれて、少しずつ息のスピードを速めていきましょう。ただし、ここですべてのエネルギーを使い切ってはいけません。サビの爆発力を引き出すために、腹筋でしっかりと声を支えつつ、喉の奥を縦に開く準備をしておくことが重要です。
Bメロの終わり、サビ直前のフレーズでは、音程が「hiA」付近まで上がります。ここを力まずに突き抜けるように歌うことができれば、サビの最高音「hiB」もスムーズに出せるようになります。焦らず、段階的にボリュームを上げていくイメージを持ちましょう。
サビ:hiBが連発する最も過酷で熱いメインセクション
いよいよ本番のサビです。最高音「hiB」は、「あきらめないで」の「な」の部分や、「君ならできるんだ」の「る」の部分など、言葉の強調したい箇所に配置されています。サビ全体が「mid2F#」から「hiA」という高い音域で構成されているため、一瞬の隙もありません。
サビを歌い切るコツは、「hiB」を点で捉えるのではなく、サビ全体の響きのポジションを高く保つことです。口角を少し上げ、鼻腔(鼻の奥の空間)に声を響かせるイメージを持つと、喉の筋肉だけで頑張る必要がなくなります。これが「共鳴」を利用した発声法です。
さらに、サビでは同じ言葉を繰り返すフレーズが多く、スタミナが削られやすいです。一息で歌い切ろうとせず、フレーズの合間で素早く深く息を吸う「ドッグブレス(短い呼吸)」を活用しましょう。肺の奥まで空気を入れ続けることで、高音を支える圧力を維持することができます。
この曲を歌いこなすために立ちはだかる難易度の壁

「できっこないをやらなくちゃ」が難しいとされる理由は、単純な音域の広さだけではありません。ロックバンド特有の勢いや、独特のリズム感、そして感情を爆発させるパフォーマンス性が組み合わさっているからです。ここでは、多くの人が躓きやすいポイントを整理します。
高音が連続するフレーズによる喉への負担
この曲の最大の壁は、サビでの高音の「密度」です。一度高い音を出して終わりではなく、hiAからhiBという高いキーが延々と続くため、喉の持久力が試されます。喉に力が入った状態で歌い続けると、声帯が炎症を起こしやすくなり、ガラガラ声になってしまいます。
解決策としては、声を「前に飛ばす」のではなく「上に響かせる」意識を持つことです。ボイトレ用語で「軟口蓋(なんこうがい)」と呼ばれる、口の奥の柔らかい部分を上げるトレーニングを取り入れましょう。これにより喉にスペースが生まれ、高音が詰まる現象を回避できます。
また、自宅での練習時は「ハミング(鼻歌)」でメロディーをなぞるのも効果的です。鼻腔の響きを確認しながら高音部分をハミングで歌うことで、喉への負担を最小限に抑えつつ、正しい音程感を脳と身体に覚え込ませることができます。
速いテンポと言葉数の多さによるリズムの崩れ
サンボマスターの楽曲は、疾走感のある16ビートのリズムが特徴です。「できっこないをやらなくちゃ」もテンポが速く、一音一音に割り振られた言葉数が多いため、滑舌が悪いとリズムに置いていかれてしまいます。特に「アイワナビーア君のすべて」のような英語混じりのフレーズは注意が必要です。
滑舌を良くするためには、舌の筋肉をリラックスさせ、口を大きく動かしすぎないことがポイントです。意外かもしれませんが、口を大きく開けすぎるとかえって顎が力み、速い動きに対応できなくなります。最小限の動きで、明瞭に発音する練習を行いましょう。
また、リズムを安定させるためには、足や手で拍子を取りながら歌うのがおすすめです。ドラムの音をよく聴き、2拍目と4拍目のアクセントを感じることで、楽曲の推進力に乗ることができます。身体全体でリズムを感じることが、結果的に声の出しやすさにも繋がります。
「シャウト」と「怒鳴り」を履き違えてしまう危険性
山口さんの歌唱スタイルは「叫び」に近い熱量を持っていますが、これはボイトレの技術に基づいた「シャウト」です。初心者がこれを真似して、単に大きな声で怒鳴ってしまうと、一瞬で喉を痛めてしまいます。怒鳴り声は声帯に強い摩擦を与えるため、非常に危険です。
安全なシャウトを出すためには、まずお腹の底からの強い支え(腹圧)が必要です。息を鋭く吐き出す力で声帯を振動させ、喉の筋肉ではなく「息の勢い」で音を歪ませるイメージです。これができるようになると、喉を痛めずにパワフルでハスキーな質感を出すことができます。
練習方法としては、「エッジボイス(呪怨のようなガラガラ声)」から少しずつ息を混ぜていくトレーニングが有効です。声帯を閉じる感覚を養うことで、少ない息でも力強い音を出すことが可能になります。まずは無理なシャウトは控え、綺麗な発声で高音を出せるようになることを優先しましょう。
練習の際は、自分の歌声をスマホなどで録音して聴き返すことを習慣にしてください。自分では「出ている」と思っていても、録音を聴くとピッチがぶれていたり、喉が苦しそうに聞こえたりすることがよくあります。客観的に分析することが、上達への一番の近道です。
高いサビを攻略するミックスボイスの習得ステップ

「できっこないをやらなくちゃ」の最高音hiBを、地声のような芯のある声で歌い上げるには、「ミックスボイス」というテクニックが不可欠です。地声(チェストボイス)と裏声(ヘッドボイス)の中間のようなこの発声を習得すれば、高音域が驚くほど楽に出るようになります。
ステップ1:綺麗な裏声(ヘッドボイス)を出す練習
ミックスボイスの土台は、実は裏声にあります。高音が出ない人の多くは地声を無理に引き上げようとしていますが、まずはリラックスした状態で、芯のある裏声を出せるようにしましょう。フクロウの真似をするように「ホー」という音で、高い音を出してみてください。
このとき、声がスカスカにならず、頭のてっぺんから抜けていくような響きを感じることが大切です。この裏声のポジションが、高音を歌う際の「正解の場所」になります。裏声で最高音のhiBまでスムーズに出せるようになったら、次のステップへ進みます。
裏声の練習を繰り返すことで、声帯を薄く引き伸ばす筋肉(環状甲状筋)が鍛えられます。この筋肉が未発達だと、高音域で声が裏返ったり、喉が締まったりする原因になります。焦らずに毎日5分でも裏声で好きな曲を歌う練習を取り入れてみましょう。
ステップ2:裏声に地声の成分を混ぜていく(鼻腔共鳴)
綺麗な裏声が出せるようになったら、そこに少しずつ「地声の響き」を加えていきます。やり方は、裏声を出したまま、鼻の付け根あたりを響かせる意識を持つことです。鼻をかむときのような「フンッ」という圧力を少し加えると、声に芯が生まれます。
この「鼻腔共鳴(びくうきょうめい)」こそが、ミックスボイスの正体です。鼻の奥にある空間に声を当てることで、喉に負担をかけずに大きな音量と太い音色を手に入れることができます。「できっこないをやらなくちゃ」のサビを歌う際は、常にこの鼻腔への響きを意識し続けてください。
具体的には、「あ」という言葉よりも「な」や「ま」といった鼻音が含まれる言葉のほうが響きを作りやすいです。サビの「あきらめないで」のフレーズで、鼻腔がビリビリと振動しているか確認しながら歌ってみましょう。振動を感じられたら、それが正しい共鳴のサインです。
ステップ3:地声から裏声への切り替えをシームレスにする
最後のステップは、低音の地声から高音のミックスボイスへ、継ぎ目なく繋げる練習です。これを「ブリッジ(換声点)の克服」と呼びます。低音から高音までを「ア〜」と滑らかにスライドさせていき、声がひっくり返らないように練習する「リップロール」などが非常に効果的です。
「できっこないをやらなくちゃ」はメロディーの跳躍(低い音から高い音へのジャンプ)が激しいため、この切り替えがスムーズでないと、歌がブツブツと切れて聞こえてしまいます。滑らかな声のグラデーションを作れるようになれば、どんな高い音も自然に聞こえるようになります。
ボイトレの現場では、この習得には個人差がありますが、数ヶ月単位でコツコツ続けることで確実に変化が現れます。hiBという壁を感じなくなる頃には、他のアーティストの難曲も歌えるようになっているはずです。自分自身の声の成長を楽しみながら取り組んでください。
山口隆さんのような「熱量」を込める表現力の磨き方

音域の問題をクリアし、テクニックを身につけたとしても、この曲が持つ「魂」の部分が欠けていては、聴き手の心に響きません。サンボマスター山口隆さんの歌唱には、卓越したテクニックの裏側に、剥き出しの感情があります。ここでは表現力を高めるための秘訣を解説します。
ダイナミクス(声の強弱)でドラマチックに構成する
この曲を上手に聞かせるためには、最初から最後まで100%の力で歌わないことがポイントです。山口さんの歌い方をよく聴くと、Aメロは非常に優しく、時にはささやくように歌われています。この「静」の部分があるからこそ、サビの「動」が際立つのです。
歌い出しの「どんなに打ちのめされたって」というフレーズは、自分自身の弱さに寄り添うように弱めのボリュームで始めましょう。そこからBメロにかけて徐々に圧力を高め、サビで一気に解放します。この強弱の差(ダイナミクス)が、聴き手に大きな感動を与えます。
具体的には、お腹から吐き出す息の量で強弱をコントロールします。喉で音量を調節しようとすると声が不安定になりますが、横隔膜を使って息のスピードを制御すれば、太い声のまま音量だけを下げることも可能です。この技術を磨くことで、表現の幅がぐんと広がります。
言葉の「語尾」と「しゃくり」に感情を乗せる
山口さんの歌唱の特徴として、フレーズの語尾を少し投げ出すように歌ったり、音を下から持ち上げる「しゃくり」を多用したりすることが挙げられます。これは楽譜通りの正確な音程を狙うよりも、「伝えたい」という衝動が優先されているからです。
例えば、「君ならできるんだ」という歌詞の語尾を、あえて少しだけ音程を崩して吐き出すように歌ってみてください。これだけで、一気に泥臭いロックな雰囲気が出ます。ただし、やりすぎると単なる音痴に聞こえてしまうため、あくまで「ここぞ」という箇所に絞って使うのがコツです。
また、フレーズの頭に「エッジボイス(喉を鳴らす音)」を少しだけ混ぜるのも有効です。「悲しみに」の「か」の直前に「ガッ」というようなノイズを一瞬入れることで、絞り出すような情熱的なニュアンスが付与されます。細かなディテールにこだわることで、あなたの歌はより本物らしくなります。
「誰に向けて歌っているか」というマインドセット
最後は技術ではなく、心の持ち方です。この曲は「応援歌」ですから、自分自身や誰かを励ますという明確な意志が歌声に現れます。ボイトレのテクニックに集中しすぎると、無機質な歌声になりがちですが、歌詞の意味を噛み締めながら歌うことで、自然と声のトーンが変化します。
山口さんはライブ中、常に観客に向かって「あなたですよ!」と語りかけます。カラオケで歌う際も、目の前にいる友人や、あるいは鏡の中の自分自身に対して、全力でエールを送るつもりで歌ってみてください。その「想い」が乗った声は、多少音程が外れても人を感動させる力を持っています。
「できっこないをやらなくちゃ」というタイトル通り、自分には無理だと思えるような高音に挑戦するその姿自体が、この曲のテーマを体現しています。失敗を恐れずに、今の自分にできる最高の熱量をぶつけることが、この曲を完璧に歌いこなすための最大の秘訣です。
| ポイント | 具体的な意識 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| ダイナミクス | Aメロを優しく、サビを力強く | 曲全体の物語性が高まる |
| 語尾のニュアンス | あえて音を外したり投げ出す | ロックらしい情熱が伝わる |
| マインドセット | 誰かを励ますイメージで歌う | 声に説得力と厚みが生まれる |
まとめ:できっこないをやらなくちゃの音域をマスターして自分らしく歌おう
「できっこないをやらなくちゃ」の音域は、地声最低音mid1E(E3)から地声最高音hiB(B4)までと広く、特に男性にとってはハードルの高い楽曲です。しかし、適切なキー設定やミックスボイスの習得、そして腹式呼吸による支えを意識することで、誰でもパワフルに歌いこなせる可能性を秘めています。
大切なのは、高い音域に怯まず、鼻腔共鳴を活かした「効率的な発声」を身につけることです。喉の力みを取り除き、リラックスした状態でエネルギーを声に変えることができれば、サビのhiBも突き抜けるような快感とともに歌えるようになります。もし原曲キーが厳しいと感じたら、まずは「-2」程度のキー変更から始めて、徐々に慣れていくのが良いでしょう。
サンボマスターの楽曲は、技術的な上手さ以上に「熱量」が評価される世界観を持っています。この記事で紹介したボイトレのポイントを押さえつつ、最後はあなたの感情を最大限に込めて歌ってみてください。きっと、あなただけの「できっこないをやらなくちゃ」が、聴く人の心を揺さぶるはずです。毎日の練習を積み重ねて、自信を持ってマイクを握りましょう。




