玉置浩二さんの歌唱力は、音楽番組でプロが選ぶ「本当に歌が上手い歌手ランキング」において、名だたるアーティストを抑えて1位に輝くなど、日本最高峰の実力として広く知られています。繊細なウィスパーボイスから、魂を揺さぶるような力強いシャウトまで、その表現力の幅広さは類を見ません。
聴く人の心を一瞬で掴んで離さないその魅力は、単なる天性の才能だけではなく、裏打ちされた高度な技術と、長年のキャリアで磨かれた表現の深さにあります。ボイストレーニングを学んでいる方にとっても、彼の歌声には参考にすべきポイントが数多く詰まっています。
この記事では、玉置浩二さんの凄さをボイトレの視点から徹底的に深掘りし、初心者の方にも分かりやすく解説します。彼のテクニックを紐解くことで、皆さんの歌唱表現を豊かにするためのヒントを見つけていきましょう。
玉置浩二の歌唱力が多くのプロに評価される理由

玉置浩二さんの歌声は、同業者であるプロのミュージシャンや音楽関係者から「別格」として扱われることが非常に多いのが特徴です。なぜこれほどまでに専門家たちを唸らせるのか、その背景には圧倒的な基礎能力と生歌のクオリティがあります。
音楽業界人が認める「歌が上手いアーティスト」第1位の常連
テレビ番組の企画などで「プロ200人が選ぶ本当に歌が上手いランキング」といった特集が組まれる際、玉置浩二さんは常にトップクラスにランクインします。久保田利伸さんや山下達郎さんといった日本を代表するレジェンドたちからも、その実力は高く評価されています。
例えば、EXILEのATSUSHIさんが玉置さんの自宅を訪ねて歌唱指導を仰いだというエピソードは有名です。プロがさらなる向上を求めて教えを乞うほど、彼の技術は奥が深く、真似のできない領域に達していると言えるでしょう。専門家ほど、彼の発声の安定感や音色の変化の多彩さに驚嘆するのです。
また、ミスチルの桜井和寿さんは彼を「天才」と称し、対談相手として指名するほどのリスペクトを寄せています。単に音程が合っているという次元を超え、声そのものが持つエネルギーや説得力が、プロたちの感性を強く刺激しているのです。
ライブ音源がCDを超えると評される圧倒的な生歌の説得力
一般的に、レコーディングされたCD音源は最新の技術で修正や加工が施されているものですが、玉置浩二さんの場合は「生歌の方が素晴らしい」と言われることが珍しくありません。これは、加工の必要がないほど完璧な技術を持っている証拠でもあります。
ライブでの玉置さんは、その場の空気感や自身の感情に合わせてメロディーを自在に変化させる「フェイク」を多用します。このフェイクが、元のメロディー以上に楽曲の良さを引き出しているため、ファンからは「ライブ盤こそが真骨頂」と評されるのです。
一音一音に魂が宿っているかのような生歌は、聴き手に直接語りかけてくるような親密さと、会場全体を包み込むような圧倒的なスケール感を両立させています。目の前で歌声を聴いた人が、その迫力に涙してしまうことも少なくありません。
正確無比なピッチと天性のリズム感
彼の歌唱力の土台を支えているのは、驚くほど正確な音程(ピッチ)とリズム感です。どんなに激しく動いたり感情を爆発させたりしても、ピッチが揺らぐことはほとんどありません。この安定感があるからこそ、聴き手は安心して彼の世界観に没入できるのです。
また、リズムについても非常に独特で、絶妙な「タメ」や「走り」を使い分けながら、楽曲に心地よいグルーヴ(ノリ)を生み出しています。ただメトロノーム通りに歌うのではなく、感情の流れに沿ったリズムの揺らぎが、歌に人間味と温かさを与えています。
幼少期から祖母の影響で民謡を聴いて育ったという背景もあり、日本人の琴線に触れるリズムの取り方が身体に染み付いているのかもしれません。この正確さと遊び心のバランスが、彼の歌を芸術の域にまで高めています。
唯一無二の表現力を支えるボーカルテクニック

玉置浩二さんの歌声を特徴づけているのは、多彩な音色を使い分ける高度なテクニックです。特にウィスパーボイスからミックスボイスへの移行や、音量の緩急の付け方は、ボイトレにおける究極のお手本と言えます。
聴き手の耳元で囁くような究極のウィスパーボイス
玉置浩二さんの代名詞とも言えるのが、たっぷりと息を混ぜた「ウィスパーボイス」です。これは直訳すると「ささやき声」のことですが、単に小さな声で歌うのとは異なり、芯がありながらも柔らかく、聴き手の心にスッと忍び込むような響きを持っています。
このウィスパーボイスは、歌詞の繊細なニュアンスを伝えるのに非常に適しています。愛しさや切なさ、独り言のような寂しさなど、言葉にならない感情を声の質感だけで表現しているのです。この技術により、聴き手は自分だけに歌ってくれているような錯覚を覚えます。
ボイトレの視点で見ると、息の量をコントロールしながら声帯を絶妙なバランスで閉じる必要があります。出しすぎれば息苦しくなり、少なすぎれば普通の声になってしまう難しい技術ですが、彼はこれを無意識レベルで完璧に使いこなしています。
地声と裏声をシームレスに繋ぐ自由自在なミックスボイス
中音域から高音域にかけて、地声(チェストボイス)と裏声(ファルセット)を滑らかに繋ぐミックスボイスの技術も卓越しています。切り替わりの瞬間が分からないほどスムーズで、声のボリュームや質感を一定に保ったまま音程を上げ下げできます。
特にバラード曲では、サビの盛り上がりで力強く地声に近い響きを出したかと思えば、次のフレーズでは透き通るような裏声に切り替えるなど、聴き手を飽きさせないダイナミックな変化を見せます。この切り替えの美しさは、喉のリラックスが極限まで保たれている証拠です。
無理に叫んで高音を出すのではなく、響きの位置を調整しながら効率よく声を鳴らしているため、聴いていて苦しさを感じさせません。これは、喉の筋肉を柔軟に保ちつつ、必要な支えをしっかり作れているからこそ可能な芸当です。
楽曲に生命を吹き込むダイナミクス(強弱)の付け方
歌における「ダイナミクス」とは、音の強弱の変化のことです。玉置浩二さんは、この強弱のコントラストが非常にハッキリしています。消え入りそうなピアニッシモから、ホールを震わせるフォルテッシモまで、その差は非常に大きいです。
例えば、Aメロでは徹底的に抑えて囁くように歌い、サビに向けて徐々にエネルギーを蓄え、クライマックスで一気に爆発させる。このドラマティックな構成が、1曲の中に豊かなストーリーを作り上げます。聴き手は、その音量の波に揺られながら、深い感動へと導かれます。
ダイナミクスを付けるには、強靭な腹式呼吸と声帯のコントロールが不可欠です。ただ大きくしたり小さくしたりするのではなく、声の密度を保ったまま音量を変化させる技術は、多くのボーカリストが目標とするべきポイントです。
玉置浩二さんの歌唱技術のポイント
1. 吐息と声を黄金比で混ぜ合わせるウィスパーボイスの精度
2. 音域による声質の変化を感じさせないシームレスなミックスボイス
3. 楽曲の感情曲線に合わせたドラマティックな音量の緩急
キャリアとともに進化する歌声の変遷と魅力

デビューから40年以上が経過してもなお、玉置浩二さんの歌声は衰えるどころか、むしろ進化し続けていると言われます。安全地帯時代から現在に至るまで、そのスタイルの変化を追うことで、彼の表現の深まりが見えてきます。
安全地帯時代のパワフルでセクシーなボーカルスタイル
1980年代、バンド「安全地帯」のフロントマンとして彗星のごとく現れた頃の玉置さんは、若々しくパワフルな歌声が魅力でした。「ワインレッドの心」や「恋の予感」などに見られるように、艶っぽくセクシーな低音から、突き抜けるような高音までを完璧に歌いこなしていました。
当時の歌唱は、どこか尖ったナイフのような鋭さと、都会的な洗練さを併せ持っていました。ビジュアル面でのメイクも相まって、ミステリアスなカリスマ性を放っていた時期です。発声的にも非常に筋肉質で、力強いエネルギーが前面に出ているのが特徴です。
この時代の玉置さんは、ロックバンドのボーカリストとしてのアイデンティティを強く持ち、バンドサウンドに負けないパンチのある声を響かせていました。今聴き返しても、その完成度の高さには驚かされます。
ソロ活動で磨かれた深みと包容力のある歌声
1990年代後半からソロ活動が本格化すると、彼の歌声には「温かみ」や「包容力」が加わるようになります。代表曲「田園」や「メロディー」に代表されるように、より人間味あふれる、等身大のメッセージを伝えるスタイルへとシフトしていきました。
歌い方も、以前の完璧主義的なスタイルから、あえて声を枯らしたり、かすれさせたりといった「表現としての不完全さ」を取り入れるようになりました。これが結果として、聴き手の心に寄り添うような深い共感を生むことになったのです。
また、この頃から日本語の発音の美しさがより際立つようになります。一文字一文字を大切に置くような歌い方は、歌詞の意味をダイレクトに脳に届ける説得力を持ち始めました。技術が表現に従う、真のアーティストへの進化が見られます。
近年のオーケストラ共演で見せる円熟した「歌神」の響き
近年、玉置浩二さんはフルオーケストラとの共演ツアーを精力的に行っています。マイクを使わない生音のオーケストラに負けない声量を持ちつつ、楽器の一部であるかのように溶け込む彼の歌声は、まさに「歌神(かしん)」と呼ぶにふさわしい境地に達しています。
60歳を超えてなお、その声量と音域は維持されており、むしろ深みが増しています。オーケストラのアレンジに合わせ、時にはオペラ歌手のような豊かな響きを見せることもあれば、アコースティックな繊細さを見せることもあります。
年齢を重ねて変化した声の質をネガティブに捉えるのではなく、それを武器にして「今しか出せない最高の音」を追求し続ける姿勢は、すべての表現者にとって大きな希望となっています。彼の歌は今、音楽という枠を超えて一つの祈りのようにさえ響きます。
ボイトレに取り入れたい玉置浩二流の発声・練習法

玉置浩二さんのような素晴らしい歌声を目指すには、どのようなことに気をつけて練習すれば良いのでしょうか。彼が公言しているアドバイスや、歌唱フォームから学べる具体的なトレーニングポイントを紹介します。
喉を締めずに背中や腰を意識したリラックス発声
玉置浩二さんは、歌唱時の姿勢について「腹と喉で歌わない、背中で歌う」という主旨の発言をしています。これは、喉周りの筋肉を完全にリラックスさせ、体の背面にある大きな筋肉やインナーマッスルを使って声を支えるという、ボイトレにおける極めて重要な考え方です。
喉だけで歌おうとすると、すぐに声が枯れたり、高い音が出にくくなったりします。しかし、背中や腰のあたりに意識を置き、上半身を真っ直ぐに保つことで、声帯の振動を妨げずに豊かな響きを共鳴させることができます。いわゆる「喉が開いた状態」を自然に作ることができるのです。
練習方法としては、壁に背中をつけて立ち、背筋を伸ばしたままリラックスして声を出す感覚を掴むのがおすすめです。喉に余計な力が入っていないか、常に鏡で確認しながらトレーニングを行いましょう。リラックスこそが、最大の声量を生む鍵となります。
練習のヒント:座った状態で、少し前かがみになりながら背中の広がりを感じて呼吸してみてください。その広がりを保ったまま声を出すと、喉への負担が軽くなるのが実感できるはずです。
日本語の響きを美しく伝える母音の処理と滑舌
彼の歌が心に届く理由の一つに、明瞭な滑舌と美しい母音の響きがあります。特に「あ・い・う・え・お」の母音が濁ることなく、一つひとつがクリアに響いているため、歌詞の内容がスッと入ってくるのです。
玉置さんは、言葉を「歌う」というよりも「話すように置く」ことを意識していると言われています。これは、メロディーに言葉を無理やり当てはめるのではなく、日常の会話のような自然なイントネーションを活かして歌う技術です。これにより、歌が単なる音楽ではなく、強いメッセージになります。
ボイトレでは、歌詞を一度メロディーなしで朗読する練習が有効です。言葉の意味を考えながら、どこで強調し、どこで優しく話すかを整理します。その後にメロディーに乗せることで、玉置さんのような説得力のある歌唱に近づくことができます。
感情を乗せるためのブレスコントロールと「溜め」の技術
歌唱における呼吸(ブレス)は、単に息を吸うだけの作業ではありません。玉置浩二さんの場合、ブレスそのものが表現の一部になっています。フレーズの間で「吸う音」をあえて聴かせることで、切なさや緊迫感を演出するテクニックです。
また、メロディーを少し遅らせて歌い始める「タメ」の技術も秀逸です。ジャストのリズムから少しずらすことで、感情が溢れ出しているような印象を与えます。これは高度なリズム感があって初めて成立する技ですが、表現の幅を広げるためには避けて通れません。
ブレスコントロールを磨くには、長いフレーズを一息で安定して歌う練習や、あえてフレーズの途中で短く息を吸ってニュアンスを変える練習が効果的です。自分の呼吸がどのように音に影響しているか、録音して客観的に聴いてみることが上達への近道です。
彼の歌から学ぶための具体的なステップと楽曲

玉置浩二さんの技術を自分のものにするためには、まず特定の楽曲を深く聴き込み、真似することから始めるのが良いでしょう。ここでは、ボイトレの教材として最適な楽曲とそのポイントを紹介します。
表現の幅を広げるために「メロディー」を徹底分析する
ソロ活動の代表曲である「メロディー」は、彼の技術が凝縮された珠玉の一曲です。この曲を練習することで、ウィスパーボイス、ミックスボイス、そして強弱の付け方を総合的に学ぶことができます。まずは原曲を何度も聴き、どこで息を混ぜ、どこで地声を強く出しているかを分析しましょう。
サビの「メロディー 泣きながら〜」というフレーズでは、切なさを最大化するために声の質感を変えています。ここを単に大きな声で歌うのではなく、感情が震えているような繊細なニュアンスを真似してみてください。一文字ずつの音量の変化に注目するのがポイントです。
また、後半に向けて徐々に声の厚みが増していく構成を意識することで、曲全体のストーリーテリング(物語性)を学ぶことができます。一本調子にならないよう、自分なりに起承転結をイメージして歌ってみましょう。
中低音を豊かに響かせるための「話すように歌う」練習
玉置さんの魅力の一つは、深みのある低音です。中低音がスカスカになってしまうと、歌の安定感が損なわれます。彼のように豊かな低音を出すためには、喉を下げすぎず、胸のあたりで響かせる感覚を養う必要があります。
練習には、低めのキーで淡々と歌う楽曲(例えば「しあわせのランプ」など)が適しています。頑張って歌おうとせず、親しい友人に語りかけるようなリラックスした状態で、声を前に出す練習を繰り返します。鼻腔や口の中の空間を広く保つことを意識してください。
中低音が安定してくると、高音域への移行もスムーズになります。基礎となる土台の声をしっかり作ることで、歌声全体の説得力が格段にアップします。地味な練習ですが、プロのような響きを手に入れるためには欠かせないステップです。
自分の個性を活かしつつ技術を吸収するためのマインドセット
玉置浩二さんのコピーを練習する際、注意すべきなのは「単なるモノマネ」で終わらせないことです。彼の歌い方のクセだけを真似すると、自分の声本来の良さが失われてしまう可能性があります。あくまで「技術」として吸収することが大切です。
彼がなぜその場所でフェイクを入れたのか、なぜその言葉を弱く歌ったのかという「意図」を考えるようにしましょう。技術の裏側にある感情や音楽理論を理解することで、そのスキルを自分の他の持ち歌にも応用できるようになります。
最終的には、玉置さんから学んだ「リラックスした発声」や「自由な表現」をベースに、自分自身の感情を乗せた歌を目指してください。誰かの真似を超えて、自分の魂で歌えるようになった時、本当の意味で彼の歌唱力から学んだと言えるでしょう。
| 練習におすすめの楽曲 | 学べるテクニック | 難易度 |
|---|---|---|
| メロディー | ウィスパー、ミックス、強弱 | ★★★★★ |
| 田園 | リズム感、滑舌、エネルギー | ★★★★☆ |
| しあわせのランプ | 中低音、語りかける表現 | ★★★☆☆ |
| 恋の予感 | 艶のある発声、ロングトーン | ★★★★☆ |
まとめ:玉置浩二の歌唱力を目指して表現の幅を広げよう
玉置浩二さんの歌唱力は、正確なピッチやリズムといった強固な土台の上に、ウィスパーボイスやダイナミクスといった繊細な表現技法が重なり合って成立しています。プロのアーティストたちがこぞって彼を敬愛するのは、その技術が単なる見せかけではなく、聴き手の魂に直接訴えかける「本物の力」を持っているからです。
ボイトレに励む皆さんにとって、彼の歌声は無限の教科書となります。喉の力を抜き、背中で支える発声法や、日本語を一文字ずつ丁寧に届ける姿勢を真似ることから始めてみてください。一歩ずつ、彼の持つ表現の奥深さに近づいていくことで、あなたの歌はもっと自由に、もっと感動的なものに変わっていくはずです。
大切なのは、形だけを真似るのではなく、彼が歌に込めている情熱や、音楽を楽しむ心そのものを参考にすることです。日々のトレーニングを楽しみながら、自分だけの魅力的な歌声を作り上げていきましょう。玉置浩二さんのような、人々の心に一生残り続ける歌声を目指して、今日から新しい一歩を踏み出してみませんか。




