カラオケの採点画面を見て「しゃくりの回数が異常に多い……」と驚いた経験はありませんか。自分では普通に歌っているつもりなのに、なぜか加点マークが連発されると、嬉しい反面「変な癖がついているのでは?」と不安になりますよね。
実は、カラオケでしゃくりが多くなるのには、歌唱技術の問題だけでなく、採点機の仕組みや無意識の喉の使い方が深く関係しています。この記事では、しゃくりが過剰に出る原因をボイトレの視点から紐解き、聴き心地の良い歌声を手に入れるための改善方法を詳しく解説します。
自然で美しいメロディラインを奏でるために、まずは自分の歌声に何が起きているのかを一緒に確認していきましょう。しゃくりを「加点のための道具」から「表現のためのテクニック」へと変えるためのヒントが満載です。
カラオケで「しゃくり」が多いと感じる主な3つの理由

カラオケを楽しんでいるときに、採点結果で「しゃくり」の回数が数十回、時には100回を超えて表示されることがあります。これほどまでに多くのしゃくりが検出される理由には、大きく分けて3つの要因が考えられます。
採点機能のアルゴリズムによる過剰な検知
カラオケ機器の採点システム、特に「精密採点」などの機能は、マイクから入力された音程の変化を非常に細かく分析しています。「しゃくり」とは、本来の音程よりも低い音から滑らかにしゃり上げるようにして目標の音程に到達する技法のことです。
このシステムのアルゴリズムは、わずかな音程の変化も「技術」として拾い上げようとするため、本人が意図していなくても、音の立ち上がりが少しでも遅れると「しゃくり」としてカウントされてしまいます。特に最近の機種は感度が高いため、少しの音の揺れも過敏に反応する傾向があります。
そのため、自分では真っ直ぐ歌っているつもりでも、機械側が「低いところから入った」と判断し、結果としてカウント数が増えてしまうのです。これは歌い手側の問題だけでなく、デジタル処理の特性による部分も大きいといえるでしょう。
プロ歌手の歌い方を無意識に模倣している
私たちが普段聴いているJ-POPや演歌のプロ歌手は、感情表現の一つとして「しゃくり」を非常に効果的に使用しています。特に最近のヒット曲では、フレーズの語頭で音を下から当てるような歌い方がトレンドになっていることも珍しくありません。
こうした楽曲を繰り返し聴いていると、脳が「これが正しい歌い方だ」と記憶し、無意識のうちにそのニュアンスを真似して歌うようになります。特に耳が良い人ほど、アーティストの細かなニュアンスを再現しようとして、自然としゃくりが多くなる傾向があります。
しかし、プロの場合は「意図的に」やっているのに対し、初心者の場合は「なんとなく」やってしまっているため、すべての音にしゃくりが入ってしまうといった事態に陥りやすいのです。憧れの歌手をトレースしようとする熱心さが、結果としてしゃくりの多さに繋がっています。
喉の筋肉や音程コントロールの未熟さ
技術的な側面で最も多い原因が、音程をコントロールするための筋肉が十分に発達していない、あるいはリラックスできていないことです。音を出す瞬間に喉が緊張していると、狙った音程にピタッと合わせることが難しくなります。
音程を司る「輪状甲状筋(りんじょうこうじょうきん)」などの喉周りの筋肉がスムーズに動かないと、一度低い音を出してから正しい音へと調整する動きが発生します。これがまさに「しゃくり」の正体です。つまり、音程を「探りながら出している」状態といえます。
また、息の支えが不安定だと、音の出だしで十分なエネルギーを声帯に送ることができず、弱々しい低い音から始まってしまいます。このように、発声の基礎体力が不足していることが、意図しないしゃくりを大量生産する物理的な要因となっているのです。
なぜ点数が伸びる?カラオケ採点における「しゃくり」の仕組み

カラオケで高得点を目指す人にとって、しゃくりは「稼ぎどころ」として知られています。なぜしゃくりが多いと点数が上がりやすいのか、その仕組みを正しく理解しておくことは、歌唱力を磨く上でも役立ちます。
加点項目としてのしゃくりの位置づけ
多くのカラオケ採点機において、しゃくりは「表現力」というカテゴリーの加点要素として設定されています。歌唱の正確性だけでなく、こうした装飾音を使いこなせているかどうかが、ボーナスポイントに繋がる仕組みです。
特に第一音目やフレーズの節目で綺麗にしゃくりが決まると、システムは「高度なテクニックを使用した」と認識し、加点フラグを立てます。このため、高得点を狙うユーザーの中には、あえてすべての音にしゃくりを入れて回数を稼ごうとする戦略をとる人もいます。
しかし、回数だけを増やしても全体のバランスが崩れれば、他の項目(安定性や音程正確率)に悪影響を及ぼす可能性があります。加点されるからといって、乱発すれば良いというわけではないのが採点システムの奥深いところです。
「こぶし」や「フォール」との違いを知る
しゃくりと混同されやすいテクニックに「こぶし」や「フォール」があります。これらはすべて音程を変化させる技法ですが、動きの方向や使い所が異なります。しゃくりは「下から上へ」移動するのに対し、フォールは「上から下へ」音を落とす技法です。
こぶしは、一つの音の中で一瞬だけ音程を上下させる、演歌などでよく聴かれる装飾音です。これらはすべて個別の加点項目としてカウントされます。しゃくりが多い人は、これら他のテクニックとの使い分けができておらず、すべてが「しゃくり」として処理されている場合があります。
それぞれの技法の違いを理解し、曲の雰囲気や歌詞の意味に合わせて使い分けられるようになると、採点結果の数字以上に「聴かせる歌」へと進化します。テクニックを単一化させないことが、表現の幅を広げる第一歩です。
代表的な歌唱テクニックの定義
・しゃくり:低い音から本来の音程へ滑らかに持ち上げる。
・こぶし:音を瞬間的に細かく上下させてアクセントをつける。
・フォール:音の終わり際に、音程を意図的にずり下げる。
点数は高いのに下手に聞こえてしまう原因
カラオケで90点以上の高得点が出ているのに、録音を聴いてみると「なんだか気持ち悪い」「上手く聞こえない」と感じることがあります。この現象の主な原因は、過剰なしゃくりによるメロディラインの崩壊です。
音楽には「正しいピッチ(音の高さ)」と、それを鳴らすべき「正しいタイミング」があります。しゃくりを多用すると、本来の音程に到達するまでにタイムラグが生じ、リズムが後ろに重くなってしまいます。これが「ねっとりとした歌い方」や「ピッチが甘い」という印象を与える原因です。
採点機は「最終的に正しい音に到達したか」と「テクニックの有無」を評価しますが、人間の耳は「音の立ち上がりの鋭さ」や「リズムとの調和」を重視します。この機械の評価と人間の感覚のズレが、高得点なのに下手に聞こえるという悲劇を生んでしまうのです。
無意識に出てしまう「しゃくり」の原因とボイトレ的視点

意図していないのにしゃくりが出てしまう場合、それは身体の使い方の「サイン」かもしれません。ボイストレーニングの観点から、どのような身体の状態がしゃくりを引き起こしているのかを深掘りします。
腹式呼吸が不安定で音の立ち上がりが遅い
歌い出しの瞬間、十分な息の圧力が声帯にかかっていないと、声は不安定になります。自転車を漕ぎ出すときに力が足りないとフラフラするように、声も出だしでエネルギーが足りないと、本来の高さより低い位置からスタートしてしまいます。
その後、慌てて息を足して音程を修正するため、結果として「しゃくり」が発生します。これは「腹式呼吸」による呼気のサポートが遅れていることが根本的な原因です。お腹の底から瞬発的に息を送り出す感覚が掴めていないと、この現象は頻発します。
特に静かなバラードや低い音域から始まるフレーズでは、息のコントロールが難しいため、無意識のしゃくりが出やすくなります。安定したピッチで歌い始めるためには、声を出す「直前」のブレスと、瞬時の呼気圧のコントロールが不可欠なのです。
地声と裏声の切り替えがスムーズにいかない
高音域に向かう際、地声(チェストボイス)から裏声(ファルセット)やミックスボイスへの切り替えが上手くいかない場合も、しゃくりが多発します。高い音を出そうとして喉が力むと、一度低いところで「構えて」から音を跳ね上げるような動きになりがちです。
これは喉の中にある「声帯の伸展(引き伸ばし)」がスムーズに行われていない証拠です。本来であれば、音程が上がるにつれて声帯は薄く引き伸ばされますが、その調整が間に合わないと、物理的に低い音から「よいしょ」と持ち上げるような動きが必要になってしまいます。
この筋肉のアンバランスが、聴き手には「苦しそうなしゃくり」として伝わります。スムーズな換声点(かんせいてん)の通過ができていないことが、高音部での意図しないしゃくりを増やす大きな要因となっているのです。
喉を締めて音程を「探り」にいっている
「音程を外したくない」という強い不安があると、人は無意識に喉を締めて声を出し、音を確認しながら目的のピッチへ合わせようとします。この「ピッチを探る動作」こそが、不要なしゃくりの正体である場合が非常に多いです。
喉を締めると声帯の自由な動きが制限されるため、狙った音を一発で当てる確率が下がります。確信がないまま声を出し、耳で聴いた自分の声が低いと感じてから修正する……というプロセスを繰り返していると、脳がそれをデフォルトの歌い方として学習してしまいます。
これは精神的な緊張や、楽曲のメロディを完全に把握できていないことが原因です。自信を持って「この音を出す」と決めきれない心の迷いが、喉の筋肉に伝わり、しゃくりという形になって現れているといえるでしょう。
ボイトレでは、これを「ピッチの的中精度」と呼びます。しゃくりを減らすことは、単に癖を直すだけでなく、喉をリラックスさせて本来の声の響きを取り戻すプロセスでもあるのです。
多すぎる「しゃくり」を改善して聴き心地を良くする方法

過剰なしゃくりを減らし、クリアでプロのような歌声に近づくためには、日頃の意識と簡単なエクササイズが効果的です。ここでは、具体的な3つの改善アプローチを紹介します。
母音の頭を意識して「縦」に音を出す練習
しゃくりが多い人は、音の入りが「斜め」に入っているイメージです。これを改善するには、音が鳴る瞬間に「真上から音を叩く」ようなイメージで発声することが重要です。特に日本語の「あいうえお」という母音を意識しましょう。
例えば「あ」という音を出すとき、低い「ぁ」から「あー」と繋げるのではなく、最初から「ア!」と明確に発声します。このとき、お腹に軽く力を入れて、息のスピードを一定に保つように心がけてください。
スタッカート(音を短く切る)でメロディを歌う練習も非常に有効です。音を一つずつ切り離して出すことで、滑らかに繋げすぎてしまう癖を強制的に排除し、正確なピッチで音を当てる感覚を養うことができます。
ガイドメロディをよく聴いて正確なピッチを狙う
カラオケのガイドメロディは、実は最強の練習ツールです。しゃくりが多いと感じたら、一度自分の歌声を抑えめにして、機器から流れるガイドメロディを集中して聴いてみてください。機械が奏でる「完璧なピッチ」と自分の声がどうズレているかを確認します。
多くの場合、ガイドメロディは「しゃくり」なしで直線的に音が切り替わります。その無機質とも言える正確な音の変化に、自分の声をぴったりとはめ込むイメージで歌ってみましょう。まずは表現を一切捨てて「音程マシーン」になったつもりで歌うのがコツです。
耳で聴く力が鍛えられると、自分の声が低いところから始まっていることにリアルタイムで気付くことができるようになります。この「気付き」こそが、癖を改善するための最も強力な武器になります。
録音して自分の歌い方のクセを客観的に分析する
歌っている最中の自分は、骨伝導の影響もあり、自分の声を正確に判断できていません。スマートフォンの録音機能を使って、自分の歌を客観的に聴き返してみましょう。驚くほど「しゃくり」が目立って聞こえるはずです。
録音を聴く際は、以下のポイントをチェックしてください。
| チェック項目 | 改善のヒント |
|---|---|
| フレーズの歌い出しはどうか | 音が下から這い上がっていないか確認 |
| 高い音へ跳ぶときはどうか | 「よいしょ」という溜めが入っていないか確認 |
| 同じ音を伸ばしているときはどうか | 音程が途中でうねっていないか確認 |
自分の癖がどこで出やすいかを知るだけで、次に歌う時の意識は劇的に変わります。恥ずかしがらずに何度も録音し、理想の歌い方に近づいているかを確認する作業を繰り返しましょう。
効果的に「しゃくり」を使いこなす表現力の磨き方

しゃくりを「ゼロ」にする必要はありません。大切なのは、無意識に出てしまう「悪い癖」をなくし、ここぞという場面で使える「武器」に変えることです。表現としてのしゃくりの使い方を学びましょう。
ここぞというフレーズで使う「意図的なしゃくり」
歌の中で感情が高ぶる部分や、歌詞の言葉を強調したい箇所で使うしゃくりは、聴き手の心を揺さぶる素晴らしいテクニックになります。例えば、サビの最高音の直前や、切なさを強調したいAメロの語り出しなどです。
意図的なしゃくりを成功させる秘訣は、前後の音を極めて真っ直ぐ(ストレート)に歌うことです。周囲が平坦だからこそ、一箇所だけの揺らぎが際立ち、洗練された印象を与えます。宝石を並べるように、大切に一箇所だけ置くイメージで使ってみましょう。
「なんとなく」ではなく「ここでしゃくる」と明確に決めて歌うことで、それは技術的なミスから芸術的な表現へと昇華されます。これができるようになれば、カラオケの得点も高く、なおかつ聴き心地も良い理想的な歌唱が可能になります。
曲のジャンルに合わせたテクニックの使い分け
音楽ジャンルによって、求められるしゃくりの種類や頻度は異なります。例えば、演歌や歌謡曲では深めのしゃくりが情緒を醸し出しますが、ロックやアップテンポなポップスでは、しゃくりすぎるとスピード感が損なわれてしまいます。
R&Bなどのブラックミュージックにルーツを持つジャンルでは、非常に細かく、素早いしゃくり(フェイク)が多用されます。これらをすべて同じ「カラオケ的なしゃくり」で対応しようとすると、楽曲の持つ雰囲気を壊してしまいかねません。
自分が歌う曲がどのジャンルに属し、どのようなニュアンスが求められているのかを研究しましょう。アーティストがどのように音を当てているかを細かく分析し、それをコピーできるようになることが、表現力を高める近道です。
脱・加点狙い!表現としての歌唱力を高めるコツ
カラオケの点数を追い求めるあまり、機械に好かれる歌い方が癖になってしまうのは勿体ないことです。点数はあくまで一つの目安とし、最終的には「人間が聴いて感動するかどうか」を基準にしましょう。
表現力を高めるためには、歌詞の物語を理解し、自分の言葉として発信することが大切です。言葉の意味を考えれば、自ずと「ここは力強くストレートに」「ここは優しくしゃくりを入れて」といったプランが見えてきます。
テクニックはあくまで感情を伝えるための「手段」です。しゃくりが多いという悩みから卒業し、自分の意志で声をコントロールできるようになれば、歌う楽しさは今の何倍にも膨れ上がるはずです。
カラオケでしゃくりが多い原因を理解して理想の歌声へ
カラオケでしゃくりが多くなってしまうのは、採点機の反応の良さや、プロへの憧れ、そして発声の土台となる筋肉や呼吸の不安定さが複雑に絡み合った結果です。決してあなたが「歌が下手だから」という理由だけではありません。
まずは、音の立ち上がりを鋭くする母音の意識や、腹式呼吸による安定したブレスを心がけることから始めてみましょう。自分の歌声を録音して客観的に聴く習慣をつければ、無意識の癖は少しずつ影を潜めていきます。
しゃくりを完全に排除するのではなく、自分の意志でコントロールできるようになれば、それはあなたの歌声を彩る強力な武器になります。機械に評価されるためだけの歌い方から卒業し、聴く人の心に真っ直ぐ届く、あなたらしい魅力的な歌声を手に入れてください。




