久保田利伸さんは、日本にR&Bというジャンルを根付かせた第一人者であり、今なお第一線で活躍し続けるレジェンドです。彼の最大の魅力は、日本人離れした圧倒的なグルーヴ感と、どこまでも自由に伸びていく艷やかな歌声にあります。
「久保田さんのようにかっこよく歌いたいけれど、音域が広すぎて自分には無理だ」と諦めていませんか。実は、彼の音域の広さを支えているのは、持って生まれた才能だけでなく、緻密なテクニックと計算された発声方法です。
この記事では、久保田利伸さんの音域のデータから、特有の歌唱テクニック、そしてボイトレで参考にすべきポイントまで詳しく解説します。この記事を読むことで、R&Bの歌い方のコツを掴み、あなたの歌唱力を一段上のレベルへと引き上げるヒントが見つかるはずです。
久保田利伸の音域はどのくらい?驚異的なレンジの広さを分析

久保田利伸さんの音域は、J-POPの男性歌手の中でも非常に広く、特に高音域の柔軟性が際立っています。一般的に男性が苦手とする音域でも、彼は地声と裏声を巧みに使い分けることで、聴き手にストレスを感じさせないスムーズな歌唱を実現しています。
地声(チェストボイス)からミックスボイスの範囲
久保田利伸さんの地声、および地声に近いミックスボイスの音域は、低音はlowG(ソ)付近から、高音はhiA(ラ)やhiB(シ)程度までが頻出する範囲です。男性としては平均的な低音から、かなり高い高音までを地声の質感でカバーしています。
特筆すべきは、中音域から高音域へ移行する際のスムーズさです。多くの男性が声を張り上げてしまう「換声点(かんせいてん)」と呼ばれる切り替えポイントにおいても、彼はミックスボイスを駆使して、柔らかく芯のある声のまま高音へと駆け上がります。
この安定したミックスボイスこそが、彼の歌声に余裕と色気を与えている最大の要因です。ボイトレで彼の曲を練習する際は、まずはこの中高音域の喉の脱力と、声の響きを鼻腔(びくう)に集める感覚を養うことが重要になります。
裏声(ファルセット)とヘッドボイスの極致
久保田利伸さんの歌唱を語る上で欠かせないのが、非常にクリアで美しいファルセット(裏声)です。彼のファルセットの音域は、hiC(高いド)を超え、hihiA(超高音のラ)付近まで達することがあります。
単に高い音が出るだけでなく、その音色に豊かな倍音が含まれているのが特徴です。吐息を混ぜたような切ないファルセットから、芯の強い鋭いヘッドボイスまで、自由自在にコントロールしています。これが、楽曲にドラマチックな抑揚を生み出すのです。
ブラックミュージックの影響を強く受けているため、ファルセットへの切り替えが非常に速く、メロディの途中で一瞬だけ裏声に逃がすような装飾音も多用します。このテクニックが、楽曲に「軽やかさ」と「遊び心」を加えています。
低音域の安定感と響きの豊かさ
高音に注目が集まりがちな久保田さんですが、実は低音域の響きも非常に豊かです。バラード曲などでは、lowG#やlowAといった低音を、胸に響くような深い音色で歌い上げます。これにより、楽曲全体にどっしりとした安定感が生まれます。
低音を出す際も、決して喉を押しつぶすようなことはせず、リラックスした状態で豊かな共鳴を保っています。この「深い低音」があるからこそ、その後に続く高音がより華やかに、より効果的に聴き手に届くという計算された構成になっています。
ボイトレの視点で見ると、久保田さんの音域をマスターするには、高音の練習ばかりではなく、まずはしっかりとした低音の土台を作ることが近道であると言えます。安定した息の支えが、全音域にわたる美声の源泉となっています。
代表曲から見る久保田利伸の音域難易度と歌い方のコツ

久保田利伸さんの楽曲は、一見するとキャッチーで歌いやすそうに聞こえますが、実際に歌ってみるとその難易度の高さに驚かされます。代表的な楽曲を例に挙げながら、具体的な音域や歌唱のポイントを整理してみましょう。
【代表曲の音域目安】
| 曲名 | 最低音 | 最高音(地声系) | 最高音(裏声系) |
|---|---|---|---|
| Missing | lowG# | mid2G# | hiB |
| LA・LA・LA LOVE SONG | mid1F | hiA | hiC |
| Bring me up! | mid1G | hiA# | hiD |
永遠のバラード「Missing」の歌唱ポイント
「Missing」は、久保田利伸さんの代表曲であり、多くのアーティストにカバーされている名曲です。音域はlowG#からmid2G#(裏声でhiB)と、彼の楽曲の中では標準的な範囲に収まっています。しかし、この曲の真の難しさは「音域」ではなく「表現」にあります。
低音域のAメロでは、ささやくような繊細な歌い出しが求められます。ここでは息漏れを多めにした「エアーボイス」を使い、切なさを演出しましょう。そしてサビに向かって徐々に声の密度を上げ、感情を高ぶらせていく構成力が重要です。
サビの盛り上がりでは、地声感の強いミックスボイスが求められます。力任せに叫ぶのではなく、眉間のあたりに響きを集めるイメージで歌うと、久保田さんらしい艷やかな高音に近づけます。フレーズ終わりのビブラートも深く、ゆったりとかけるのがコツです。
リズムと高音の融合「LA・LA・LA LOVE SONG」
この曲は、16ビートの軽快なリズムに乗せて歌うことが最大の課題です。地声の最高音はhiA(ラ)で、サビのクライマックスで登場します。さらにフェイク部分ではhiC(高いド)のファルセットが使われており、華やかな構成になっています。
歌い方のコツは、音を「点」で捉えることです。音符を長く伸ばしすぎず、リズムの裏拍を意識して短く切るように歌うと、久保田さん特有のグルーヴ感が生まれます。特にサビの「まわれまわれ」の部分は、スタッカート気味に発音するのがポイントです。
また、高音域が連続するため、喉が締まりやすい傾向にあります。顎をリラックスさせ、口の中を広く保つように意識してください。ファルセットに切り替える際も、声のボリュームを落としすぎず、芯を残したまま移行することで、楽曲の勢いを殺さずに歌い切ることができます。
圧倒的なハイトーンを誇る「Bring me up!」
近年のヒット曲である「Bring me up!」は、非常に高いキーが要求される難楽曲です。地声の最高音がhiA#(ラ#)まで達し、さらにファルセットでhiD(高いレ)まで駆け上がります。久保田さんの衰えない歌唱力と、進化し続けるテクニックが詰まっています。
この曲を歌いこなすには、強固なミックスボイスが不可欠です。地声と裏声の境界線を感じさせないほどに鍛え上げられた発声が求められます。練習では、まずファルセットでメロディを正確になぞり、そこに少しずつ地声の響きを混ぜていくトレーニングが有効です。
また、この曲はテンポが速く、言葉数が多いため、滑舌(かつぜつ)の良さも重要になります。特に母音をはっきりと発音するのではなく、子音を鋭く発音することで、R&Bらしい「エッジ」の効いた歌声になります。リズムトレーニングと発声練習をセットで行う必要があります。
久保田利伸流の「リズム」と「グルーヴ」を身につける

久保田利伸さんの歌声が魅力的なのは、広い音域を使いこなしているからだけではありません。日本人のリズム感を根本から変えたと言われる、彼の「グルーヴ」こそが最大の武器です。音域を広げることと並行して、リズムの捉え方を学ぶことが、彼に近づく最短距離となります。
16ビートを体で感じる「レイドバック」の技術
久保田さんの歌唱の大きな特徴の一つに「レイドバック」があります。これは、ジャストのリズムよりもあえてわずかに遅れて歌うことで、独特の心地よさや「タメ」を生み出すテクニックです。これがR&B特有の「重たいグルーヴ」を作ります。
メトロノームを使って練習する際、クリックの音にぴったり合わせるのではなく、クリックの「後ろ側」を狙って声を出す練習をしてみてください。最初はリズムが崩れて聞こえるかもしれませんが、慣れてくると楽曲に深いニュアンスが生まれるようになります。
ただし、単に遅れるだけではテンポが崩れてしまいます。体の軸はしっかりとジャストのリズムを刻みながら、声の出だしだけをコントロールする高度な感覚が必要です。足でリズムを取りながら、上半身はリラックスして自由に動かす習慣をつけましょう。
アクセントとゴーストノートの活用法
久保田さんの歌い方を聞くと、すべての音を均一な強さで歌っていないことに気づくはずです。強弱のコントラストが非常に激しく、これがリズムの躍動感を生んでいます。特にフレーズの頭だけでなく、意外な場所に入る「アクセント」が特徴的です。
また、「ゴーストノート」と呼ばれる、音に聞こえるか聞こえないか程度の小さな音を混ぜるテクニックも多用します。息を吐く音や、言葉の語尾を小さく「っ」と切るような音が、次の音への推進力を生み出し、聴き手を飽きさせないグルーヴを生み出します。
ボイトレでは、楽譜に書いてある音符をなぞるだけでなく、どこで強く歌い、どこで息を抜くかを細かく設定して練習しましょう。久保田さんの音源をスロー再生して、微細な音の変化を耳でコピーすることから始めるのがおすすめです。
グルーヴを感じるためのコツは、楽器の音をよく聞くことです。特にベースとドラムのキック(バスドラム)の音に意識を集中させ、その波に乗るように歌う練習をしてみましょう。
日本語を英語のように響かせる発音の工夫
久保田利伸さんの歌声は、日本語で歌っていてもどこか英語のような響きを感じさせます。これは、日本語特有の「平坦な発音」を避け、母音の響きを深く取ったり、子音を強調したりしているためです。
例えば「あ」という音を出す際も、単に口を開けるだけでなく、喉の奥のスペース(咽頭腔)を広く保ち、少しこもったような、かつ艶のある音色を作っています。また、母音を「a-i-u-e-o」と明確に分けるのではなく、滑らかにつなげることで、フレーズ全体の流れを止めないようにしています。
この発音法をマスターすると、高音域でも喉が締まりにくくなるという副次的効果もあります。英語の曲を練習曲として取り入れ、その口の形や息の使い方を日本語の曲に応用するボイトレ方法は、久保田流を習得する上で非常に有効です。
魅力的なフェイクとビブラートの習得術

久保田利伸さんの歌唱における「華」といえば、自由自在に繰り出されるフェイク(アドリブ的なメロディの変化)と、深いビブラートです。これらは聴き手に圧倒的な歌唱力を印象付ける要素ですが、実は明確なパターンとテクニックが存在します。
ペンタトニックスケールに基づいたフェイクの基礎
久保田さんが多用するフェイクは、主に「ペンタトニックスケール(5音階)」に基づいています。これはブルースやソウルミュージックの基本となるスケールで、日本人にも馴染みやすい響きを持っています。彼はこのスケールの音を高速で移動することで、あの複雑なラインを作っています。
フェイクを習得するためには、まずスケールの練習が不可欠です。「ドレミソラ」の5音を使い、さまざまな順番で声を動かす練習を毎日行いましょう。最初はゆっくり正確に、慣れてきたら徐々にスピードを上げていきます。
大切なのは「音の階段」を一段ずつしっかり踏む感覚です。音が滑ってしまうと、単に音が外れているように聞こえてしまいます。腹式呼吸による「息の押し」を使って、一つひとつの音を明確にアタックする練習を繰り返してください。
喉をリラックスさせた高速ビブラート
久保田さんのビブラートは、非常に細かく、かつ安定しています。フレーズの語尾だけでなく、フレーズの途中でもさりげなくかけられており、歌声に絶え間ない表情を与えています。このビブラートは、喉の力を完全に抜いた状態でなければ実現できません。
喉仏(のどぼとけ)の周りの筋肉を固めてしまうと、重たく不自然なビブラートになってしまいます。まずは、喉を「あくび」の形に開き、リラックスした状態で、軽く声を震わせる感覚を掴みましょう。犬がハァハァと息をするような練習(ドッグブレス)も、横隔膜の柔軟性を高め、ビブラートの助けになります。
また、彼はビブラートの速度も楽曲のテンポに合わせて使い分けています。アップテンポな曲では細かく鋭いビブラートを、バラードではゆったりとした深いビブラートを意識することで、久保田さんらしい表現力に一歩近づけます。
ブレスコントロールが生み出すロングトーンの艶
フェイクや高音を支えるのは、強靭なブレスコントロールです。久保田さんは、長いフレーズを歌い切る際も、最後まで声の張りが衰えません。これは、肺に入れた空気を一定の圧力で吐き出し続ける「支え」が完璧にできている証拠です。
ボイトレの練習として、一定の強さで「スー」と息を長く吐き続けるトレーニングを取り入れましょう。40秒から1分程度、揺らぎなく吐き続けられるようになると、歌声の安定感が劇的に変わります。この安定した息の上に、フェイクや高音を乗せていくイメージを持ちましょう。
さらに、久保田さんは「ブレスそのもの」を表現として使います。フレーズの合間に大きく息を吸う音をあえてマイクに乗せることで、臨場感や情熱を演出しています。息の吸い方一つとっても、彼の計算されたテクニックが光っています。
ボイトレで久保田利伸のように歌うための具体的ステップ

久保田利伸さんのような音域と歌唱力を身につけるためには、日々の地道なトレーニングが欠かせません。ここでは、ボイトレ初心者の方でも今日から取り組める、具体的なステップを提案します。焦らず段階を踏んで練習していきましょう。
ステップ1:鼻腔共鳴を極めて音域を広げる
久保田さんのような高い音域をスムーズに出すには、声を喉で鳴らすのではなく、鼻の奥にある空間(鼻腔)に響かせる「鼻腔共鳴(びこうきょうめい)」をマスターするのが最も効率的です。喉への負担を最小限に抑えつつ、鋭い高音を出すことができます。
まずは「ハミング」の練習から始めましょう。口を閉じた状態で「んー」と声を出し、鼻の付け根あたりがビリビリと振動する感覚を探します。その振動を保ったまま、口を開けて「まー」や「なー」という音に繋げていきます。これがミックスボイスの基礎となります。
この共鳴ができるようになると、今まで苦しかった高音域が驚くほど楽に出せるようになります。久保田さんの艷やかな声の成分は、この鼻腔での響きが非常に豊かであるため、毎日5分でもハミングの練習を続けることをおすすめします。
ステップ2:ファルセットの強化と地声との融合
次に、裏声(ファルセット)を徹底的に鍛えます。久保田さんのように「地声のように聞こえる裏声」を作るには、裏声の筋肉(輪状甲状筋)を柔軟にする必要があります。最初はか細い声でも構わないので、できるだけ高い音まで裏声で出す練習をしてください。
裏声が出せるようになったら、今度は同じ音程を「地声」と「裏声」で交互に出す練習をします。これを繰り返すことで、地声と裏声の境界線が曖昧になり、スムーズな換声点の移動が可能になります。この練習は「サイレンボイス」とも呼ばれ、音域拡大に非常に効果的です。
久保田さんの曲を歌う際は、裏声に切り替える直前の音を少し「薄く」出すように意識すると、切り替えが目立たなくなります。この微細なボリュームコントロールこそが、プロのような滑らかな歌唱への近道です。
裏声の練習をする際は、喉を「ホッ」と丸く開けるイメージを持つと、芯のある綺麗な音色になりやすいです。吐息を混ぜすぎないように注意しましょう。
ステップ3:体全体を使ったリズムトレーニング
最後に、音域と同じくらい重要なリズム感を鍛えます。久保田利伸さんの曲は、耳だけでリズムを取っていては歌いこなせません。全身を使って、16ビートの細かい刻みを体得する必要があります。
おすすめの練習法は、メトロノームを鳴らしながら、手拍子で2拍目と4拍目(バックビート)を叩き、同時に足で4分音符を刻みながら歌うことです。これに慣れてきたら、さらに膝を柔らかく使って、ダウンのリズムを取りながら歌ってみてください。
リズムが体に入ってくると、不思議と声も出やすくなります。なぜなら、リズムの勢いがブレスの勢いに繋がり、高音を出すための「助走」になってくれるからです。久保田さんのように、踊りながらでも完璧な音程で歌える状態を目指して、体幹を意識した歌唱を心がけましょう。
久保田利伸の音域を目指すためのステップとポイントまとめ
久保田利伸さんの音域と歌唱テクニックについて詳しく見てきましたが、彼の歌声に近づくためには、単に高い音を出すこと以上の深い理解が必要です。最後に、この記事の重要ポイントを振り返りましょう。
まず、久保田さんの音域はlowGからhiC(ファルセットを含めればhihiA以上)と非常に広く、地声と裏声をシームレスに繋ぐミックスボイスがその根幹にあります。この音域をマスターするには、鼻腔共鳴を意識した発声練習と、裏声を鍛えるトレーニングが欠かせません。
次に、彼の最大の武器である「リズムとグルーヴ」を忘れてはいけません。16ビートの裏拍を感じ、アクセントやレイドバックを駆使することで、初めて彼の曲に魂が宿ります。音域の練習と並行して、体全体でリズムを刻む習慣を身につけましょう。
また、代表曲「Missing」や「LA・LA・LA LOVE SONG」に見られるように、楽曲ごとの表現の使い分けも重要です。繊細なエアーボイスから力強いハイトーン、そして高速のフェイクまで、多彩な引き出しを持つことが、R&Bシンガーとしての魅力を高めます。
久保田利伸さんの歌声は、一朝一夕で手に入れられるものではありません。しかし、正しいボイトレの理論に基づき、一つひとつのテクニックを丁寧に磨いていけば、必ずあなたの歌声は進化します。R&Bの神様が歩んだ道を参考に、あなたらしい「グルーヴ」を見つけていってください。




