音楽ユニット「YOASOBI」のボーカル・ikuraとしても、ソロアーティスト・幾田りらとしても、その歌声は多くの人を魅了し続けています。透明感がありながら、どこか芯の強さを感じさせる彼女の歌声には、どのような秘密が隠されているのでしょうか。
この記事では、幾田りらの特徴をボイストレーニングの視点から詳しく紐解いていきます。彼女のような歌声に憧れる方や、歌唱テクニックを学びたい方に向けて、具体的な練習のヒントもまとめました。彼女の魅力を知ることで、自分自身の歌声を磨くきっかけを見つけてみてください。
幾田りらの特徴的な歌声の魅力と声質の秘密

幾田りらさんの最大の武器は、一度聴いたら忘れられない透明感あふれる声質です。しかし、その魅力は単に「声が綺麗」という言葉だけでは片付けられません。ここでは、彼女の声がなぜこれほどまでに心地よく響くのか、その理由を深く掘り下げていきます。
透き通るようなクリスタルボイスの正体
幾田りらさんの歌声を象徴するのは、混じりけのない澄んだ音色です。ボイトレの用語で言えば、声帯の鳴らし方が非常に効率的で、無駄な力みがないことが挙げられます。息が綺麗に声に変換されているため、聴き手にストレスを感じさせないクリアな響きが生まれているのです。
また、彼女の声には高い周波数の成分が含まれており、これが「透明感」として認識されます。特に高音域においても、キンキンとした金属音のような硬さではなく、空気に溶け込むような柔らかさを持っています。この絶妙なバランスが、多くのリスナーを惹きつける大きな要因となっています。
声の立ち上がりが非常に速いのも特徴です。音を出した瞬間にピントが合った状態で声が響くため、メロディのラインが非常に美しく、鮮明に聞こえてきます。これは、息のコントロールと声帯の閉じ具合(閉鎖)のバランスが完璧に保たれている証拠でもあります。
聴く人の心に寄り添うナチュラルな響き
幾田りらさんの歌声からは、作為的な飾りのない「素直さ」を感じることができます。これは、彼女が持つ等身大の表現力が声に乗っているからです。歌い上げるような大げさなビブラートを多用するのではなく、言葉の一つひとつを丁寧に置くような歌い方が、聴き手に親近感を与えます。
ボイトレの観点で見ると、彼女は喉を締め付けることなく、リラックスした状態で発声しています。喉の奥がしっかり開いているため、声が体の中にこもらず、外に向かって自然に放射されています。この開放的な響きが、聴く人にとっての心地よさにつながっているのでしょう。
彼女のルーツであるストリートライブでの経験も、このナチュラルな響きに影響を与えていると考えられます。マイクを通さなくても届くような、真っ直ぐなエネルギーが声の根底に流れています。優しさの中に凛とした強さを感じるのは、こうした背景があるからかもしれません。
安定感抜群のピッチと豊かな倍音
どんなに難しい楽曲でも、彼女のピッチ(音程)が揺らぐことはほとんどありません。特にYOASOBIの楽曲は音の跳躍が激しく、スピード感も速いですが、彼女はそれらを完璧にコントロールしています。この正確なピッチ感こそが、プロとしての高い技術を裏付けています。
また、彼女の声には豊かな「倍音(ばいおん)」が含まれています。倍音とは、基本となる音の周りに含まれる響きの成分のことです。彼女の声に含まれる心地よい倍音成分が、楽曲に奥行きを与え、シンプルなメロディでもドラマチックに聴かせる力を持っています。
ボイトレでピッチを安定させるためには、腹式呼吸による安定した息の供給が欠かせません。幾田りらさんは、激しいリズムの中でも体の軸がブレないため、安定した歌唱が可能です。高音から低音まで、響きのポイントが一定に保たれていることも、安定感の秘訣と言えるでしょう。
YOASOBIのikuraと幾田りらで見せる歌声の使い分け

YOASOBIのボーカルであるikuraとしての活動と、シンガーソングライター・幾田りらとしてのソロ活動では、その歌声の使い分けが非常に巧妙です。同じ人物でありながら、プロジェクトごとに声の質感をコントロールする技術について解説します。
YOASOBIで求められる「楽器のような正確さ」
YOASOBIの楽曲は、ボカロ文化の影響を強く受けており、人間が歌うには非常に難易度が高いのが特徴です。ikuraとして歌う際、彼女は自分の声を一つの楽器のように扱い、完璧なリズムとピッチで楽曲を構築しています。これにより、Ayaseさんの作る複雑なサウンドと見事に調和します。
ここでは、感情を乗せすぎることなく、あえてフラットに歌い上げるパートも多く見られます。しかし、それが単なる「無機質」にならないのは、言葉の語尾や息継ぎの瞬間にわずかなニュアンスを込めているからです。この絶妙な「引き算の美学」が、YOASOBIの世界観を強固なものにしています。
また、早いテンポの中で歌詞を詰め込む楽曲では、滑舌(かつぜつ)の良さが際立ちます。一音一音を正確に発音しながら、音楽的なグルーヴを損なわない技術は、並大抵のトレーニングで身につくものではありません。彼女の柔軟な対応力が、YOASOBIの爆発的なヒットを支えていると言えます。
ソロ活動で発揮される「ストーリーテラーの表現」
一方、幾田りらとしてのソロ名義では、より人間味あふれる、温かい表現が中心となります。彼女自身が作詞作曲を手がける楽曲では、言葉の温度感を伝えることが重視されています。ikuraの時よりも、息の成分を多めに含ませた「ウィスパーボイス」的なアプローチが増えるのも特徴です。
ギターやピアノの弾き語りスタイルでは、伴奏の強弱に合わせて声のボリュームや音色を細かく変化させています。これにより、聴き手は彼女の語る物語にぐっと引き込まれます。テクニックを披露するための歌ではなく、心に届けるための歌を追求している姿勢が見て取れます。
ソロ活動での彼女は、声の「ゆらぎ」を効果的に使っています。あえて完璧に制御しすぎないことで生まれる切なさや、エモーショナルな響きが、楽曲に命を吹き込んでいます。プロジェクトごとに自分の声の役割を完璧に理解し、使い分けている点は、全てのボーカリストが参考にすべきポイントです。
多様なジャンルに対応する順応性の高さ
彼女はポップスだけでなく、バラード、さらにはラップ調のパートまで幅広くこなします。これは、彼女の持つ喉の柔軟性が非常に高いことを示しています。声区(地声、裏声、ミックスボイス)の切り替えが非常にスムーズで、どこに境目があるのか分からないほど滑らかです。
特に、裏声(ファルセット)への移行は彼女の得意とする技術の一つです。地声の芯を保ったまま、ふわりと裏声に抜ける瞬間は、聴いていて非常に心地よいものです。この技術があるからこそ、難易度の高いYOASOBIの曲から、しっとりとした自作曲まで自在に表現できるのです。
また、楽曲の解釈力も卓越しています。歌詞に込められた感情を声のトーンに変換する能力が高いため、どんなジャンルの曲を歌っても、幾田りらとしての個性を残しつつ、楽曲の魅力を最大限に引き出すことができます。まさにカメレオンのような変幻自在なボーカリストと言えるでしょう。
歌唱力を支える高度なボイトレテクニックの分析

幾田りらさんの歌唱力は、天性のものだけでなく、地道な積み重ねによる高度な技術に支えられています。ここでは、具体的にどのようなテクニックが使われているのか、ボイトレの視点から3つのポイントに絞って分析します。
驚異的なブレスコントロールとウィスパーボイス
彼女の歌唱において特筆すべきは、息のコントロール(ブレスマネジメント)の巧みさです。特に、吐く息に声を少しだけ乗せる「ウィスパーボイス」の使い方が非常に上品です。これにより、歌い出しに繊細なニュアンスが加わり、聴き手の耳を惹きつけます。
ブレスを単なる「息継ぎ」としてだけでなく、表現の一部として活用しているのも特徴です。わざと吸気音(息を吸う音)をマイクに乗せることで、臨場感や切なさを演出することもあります。これは、自分の呼吸がどのように音として出力されているかを完全に把握しているからこそできる技です。
ロングトーンにおいても、息の量が最後まで一定に保たれています。音の終わり際で声が震えたり、しぼんだりすることなく、スッと綺麗に消えていく処理(リリース)は非常に美しく、彼女のテクニックの高さが伺えます。これを実現するには、強い腹圧のキープが必要不可欠です。
ミックスボイスの使い分けと音域の広さ
幾田りらさんは、地声と裏声の中間に位置する「ミックスボイス」を非常に高い精度で使いこなしています。彼女の音域は非常に広いですが、高い音でも地声のような力強さを保ちつつ、無理なく発声できています。これにより、パワフルなサビでも声が細くなることがありません。
彼女のミックスボイスの特徴は、ヘッドボイス(頭声)寄りの響きをうまく混ぜている点にあります。鼻腔(鼻の奥の空間)をうまく共鳴させているため、声が明るく、遠くまで届く響きになります。これが、彼女の歌声の透明感を形成する重要な要素となっています。
逆に、低い音域では胸の響き(チェストボイス)を適度に取り入れ、安定感を持たせています。全音域にわたって共鳴のバランスを微調整しているため、低い音から高い音まで一つの音色のようにスムーズにつながります。このシームレスな感覚は、ボイトレにおいても最難関の一つとされる技術です。
ミックスボイスを習得するには、裏声を強化し、地声とのバランスを整える必要があります。幾田りらさんのような声を出すには、まずは喉の力を抜き、鼻のあたりに響きを集めるイメージを持つことが大切です。
リズム感とアーティキュレーションの精度
幾田りらさんの歌唱には、一切の「もたつき」がありません。YOASOBIの楽曲に代表されるような、16分音符が連続する速いフレーズでも、リズムの表と裏を正確に捉えています。この卓越したリズム感が、聴いている側に高揚感を与えます。
また、言葉の切り方や強調の仕方を指す「アーティキュレーション」のセンスも抜群です。歌詞のどの部分を強調し、どこを短く切るか(スタッカート)という判断が的確で、歌に小気味よいアクセントをつけています。これにより、言葉が立体的に聞こえてくるのです。
滑舌の良さも特筆すべき点です。舌の動きが非常にスムーズで、早口のパートでも子音がはっきりと聞き取れます。特に「タ行」や「カ行」のアタックが鋭いため、リズムがより際立って聞こえます。これは、口腔内のスペースを広く保ち、舌の筋肉を柔軟に使えている結果です。
幾田りら風の歌声を目指すための具体的な練習方法

彼女のような透明感のある歌声に憧れる方は多いでしょう。ここでは、幾田りらさんの特徴を取り入れ、自分の歌声をブラッシュアップするための具体的なボイトレ練習法を提案します。
喉の脱力と鼻腔共鳴を意識したトレーニング
彼女のような透明感を出すための第一歩は、喉の余計な力を抜くことです。喉が締まっていると、声に雑味が混じり、透明感が失われてしまいます。まずは「あくび」をした時のような、喉の奥が広く開いた状態を意識して発声の準備をしましょう。
次に、声を鼻の付け根あたりに響かせる「鼻腔共鳴(びくうきょうめい)」を練習します。口を閉じて「ン〜」とハミングをしてみてください。この時、鼻や顔の前面がビリビリと振動していれば、共鳴がうまくできている証拠です。この響きを維持したまま、徐々に口を開いて「あ〜」という発声につなげていきます。
この練習を繰り返すことで、喉に負担をかけずに、明るく澄んだ声を出す感覚が身につきます。彼女の歌声をイメージしながら、できるだけ軽く、遠くに声を飛ばすような感覚で練習してみてください。力んで大きな声を出す必要はありません。小さな声でも「響き」を感じることが重要です。
ウィスパーボイスを磨くブレスコントロール
幾田りらさんの繊細な表現に欠かせないのが、息を混ぜた発声です。これを習得するには、まず「溜息(ためいき)」から練習を始めます。「はぁ〜」と深く溜息をつき、その息の中に少しだけ声を混ぜていきます。これがウィスパーボイスの基本となります。
大切なのは、息が漏れすぎて声が消えてしまわないように、一定の圧力を保つことです。腹式呼吸を意識し、お腹の底からじわじわと息を押し出すイメージを持ちましょう。ろうそくの火を消さない程度の、細く長い息の供給をマスターすることがポイントです。
練習曲として、彼女のスローテンポな楽曲のAメロを使い、ささやくように歌ってみるのが効果的です。歌詞の一音一音に丁寧な息を添えることで、歌声に深みと表情が生まれます。自分の声を録音して聴き比べ、息と声の比率を調整しながら理想のバランスを探してみてください。
母音の形と滑舌を整える口角の意識
彼女のような明るい歌声を作るには、口の形が非常に重要です。彼女の歌唱動画をよく観察すると、口角がキュッと上がっていることが多いことに気づくでしょう。口角を上げることで、声のトーンが上がり、よりポジティブでクリアな響きになります。
練習の際は、鏡を見て口角を左右に軽く引き上げた状態で歌うようにしましょう。特に「い」や「え」の母音の時に口が横に広がりすぎないよう注意しつつ、上の前歯が少し見えるくらいの表情をキープします。これだけで、声の明瞭度が格段にアップします。
滑舌については、舌を素早く動かす練習が有効です。「ラララ」「タタタ」といった音を、メトロノームに合わせて徐々に速く発音する練習を取り入れましょう。舌の先を鋭く使うイメージを持つことで、彼女のような切れ味鋭いリズム感に一歩近づくことができます。
【幾田りら風ボイトレのポイント】
1. 喉の奥をあくびの形で開き、鼻腔に響かせる
2. 腹式呼吸で一定の息を送り、ウィスパーボイスを安定させる
3. 口角を上げ、子音をはっきり発音してリズムを際立たせる
表現力を磨く!幾田りらの楽曲から学ぶべきポイント

技術的な側面だけでなく、幾田りらさんの歌には心を揺さぶる「表現力」が詰まっています。彼女の楽曲を聴き込み、真似することで得られる、表現の引き出しを増やすためのポイントを解説します。
「語るように歌う」Aメロのテクニック
幾田りらさんの歌唱で学ぶべき最も大きなポイントは、Aメロなどの静かなパートでの「語り」の技術です。彼女はメロディを追うだけでなく、歌詞の意味を噛みしめるように歌います。まるで隣で誰かに話しかけているような、親密な空気感を作り出すのが非常に上手です。
これを真似するには、まず歌詞を朗読することから始めましょう。メロディを一旦忘れ、歌詞を感情を込めて読んでみます。どこで一呼吸置くか、どこで言葉を強めるかを確認し、そのニュアンスをそのまま歌に乗せてみてください。音程を正確に歌うことよりも、言葉を届けることを優先するのがコツです。
また、彼女はフレーズの語尾(リリース)を非常に繊細に扱います。音が消える瞬間の余韻を大切にすることで、聴き手の心に深い印象を残します。語尾を投げ出さず、最後まで丁寧にコントロールする意識を持つだけで、歌のクオリティは劇的に向上します。
サビで見せる感情の解放と盛り上げ方
静かなAメロから一転、サビでは圧倒的なエネルギーを解放するのが彼女のスタイルです。単に声を大きくするのではなく、声の密度を濃くすることで、盛り上がりを表現しています。ここで重要になるのが、前述したミックスボイスの技術です。
サビに向けて徐々にギアを上げていくような、グラデーションのある表現を意識しましょう。いきなり100%の力で歌い出すのではなく、サビの最高音や最も伝えたい言葉に向けて、感情のボルテージを高めていく構成力が求められます。彼女の歌唱は、常にクライマックスに向かうストーリー性を持っています。
高音域を出す際は、体に力を入れるのではなく、むしろ余計な力を抜いて「響きを広げる」イメージを持つことが大切です。彼女のように、突き抜けるような爽快感のある高音を目指すには、上半身はリラックスさせ、下半身の安定感で支えるバランスを練習曲を通じて体感してみましょう。
ビブラートとノンビブラートの使い分け
幾田りらさんの歌には、過剰なビブラートはあまり見られません。基本的には真っ直ぐなロングトーン(ノンビブラート)を使い、フレーズの最後の方で細かく繊細なビブラートをわずかに入れることが多いです。この潔さが、彼女の歌声の透明感をより際立たせています。
ビブラートは、かけすぎると演歌風や古い歌唱スタイルに聞こえてしまうことがありますが、彼女のような使い分けをマスターすれば、現代的で洗練された印象になります。音を真っ直ぐ伸ばす練習を基本とし、必要な時だけ「感情の震え」としてビブラートを添える程度に留めるのが彼女風です。
練習では、まず一定の音程で声を真っ直ぐ数秒間キープすることに集中しましょう。揺れのない安定した音が出せるようになってから、最後の1秒だけ優しく音を揺らす練習を加えます。この「引き算のビブラート」を習得することで、彼女のような凛とした歌声に近づくことができるはずです。
| 表現の要素 | 幾田りらさんの特徴 | 練習の目標 |
|---|---|---|
| 歌い出し | ウィスパーボイスで親密に | 言葉を語るように発声する |
| サビの盛り上げ | 声の密度と共鳴を高める | 高音でも響きを維持する |
| ロングトーン | 真っ直ぐなノンビブラート | 音程を揺らさずキープする |
| 語尾の処理 | 消え入るような丁寧なリリース | 音の終わりまで息を使い切る |
幾田りらの特徴を活かしてあなたの歌唱力をレベルアップさせるまとめ
ここまで、幾田りらさんの歌声の特徴と、それを支える技術、そして練習方法について詳しく解説してきました。彼女の魅力は、透き通るような声質というギフトに加え、それを最大限に活かすための緻密なテクニックと、楽曲への深い理解に基づいています。ボイトレを通じて彼女のスタイルを学ぶことは、表現の幅を広げる大きな助けになるでしょう。
最後に、この記事で紹介した重要なポイントを振り返ります。まず、幾田りらさんのような透明感を目指すには、喉の脱力と鼻腔共鳴をセットで意識することが不可欠です。次に、ブレスコントロールを磨き、ウィスパーボイスとミックスボイスを自由に使い分けられるようになることで、楽曲に豊かな表情をつけることができます。
また、技術だけに固執せず、彼女のように「言葉の温度感」を大切にした歌唱を心がけてください。YOASOBIで見せる正確無比なリズム感と、ソロで見せる温かな情緒。その両方を意識して使い分けることで、あなたの歌声もより多面的で魅力的なものへと進化していくはずです。日々のトレーニングの中に、幾田りらさんのエッセンスを取り入れて、自分らしい最高の歌声を目指していきましょう。




