「歌が上手い人は、そもそも喋っている時から声が違う」と感じたことはありませんか?カラオケやライブで人の歌声を聴いたとき、自分の声と比べて「何かが根本的に違う」と感じるのは、単なる音程やリズムの良さだけが理由ではありません。歌が上手い人の声には、独特の響きや安定感、そして聴き手を惹きつける特別な要素が備わっています。
この記事では、歌が上手い人と声が違う理由をボイストレーニングの視点から紐解いていきます。声が出る仕組みや、プロが実践している体の使い方を知ることで、あなたの歌声も劇的に変化する可能性があります。自分自身の声を磨き、理想の歌声に近づくための具体的なステップを一緒に学んでいきましょう。
歌が上手い人は声が違うと感じる理由とは?

多くの人が「歌が上手い人は声の質そのものが違う」と感じるのは、決して気のせいではありません。そこには、発声の基礎となる体の使い方が大きく関係しています。まずは、上手い人の声に共通する特徴を見ていきましょう。
響き(共鳴)の豊かさが生む「声の厚み」
歌が上手い人の声を聞くと、マイクを通したときに非常に豊かで奥行きのある響きを感じることがあります。これは、体の中にある「共鳴腔(きょうめいくう)」という空洞を上手く使えているからです。共鳴腔とは、喉や口の中、鼻の奥などにある空間のことで、ここで声を響かせることで音が増幅されます。
初心者の場合、声が喉だけで鳴ってしまい、薄っぺらい印象になりがちです。一方で、歌が上手い人はこの空洞を楽器のように使いこなし、声に豊かな倍音(ばいおん)を加えています。倍音とは、基本の音以外に含まれる高い周波数の音のことで、これが豊富だと「ツヤのある声」や「響きのある声」として認識されます。
また、響きが豊かな声は、小さな声でも遠くまで届くという特徴があります。無理に張り上げなくても耳に心地よく届くため、聴き手は「この人は声が違うな」と感じるのです。この響きのテクニックは、才能だけでなくトレーニングによって誰でも身につけることができます。
安定した呼吸がもたらす「声の密度」
歌が上手い人の声が違うように聞こえるもう一つの理由は、声の密度と安定感にあります。歌声に力強さや安定感がある人は、共通して「呼吸」の使い方が非常に洗練されています。特に、腹式呼吸をベースとした力強い呼気のコントロールが、声の土台を作っています。
呼吸が不安定だと、声が震えたり、フレーズの途中で苦しそうに聞こえたりします。しかし、歌が上手い人は一定の圧力を保って息を送り出すことができるため、声の輪郭がはっきりと保たれます。この「息の支え」があることで、声がスカスカにならず、密度の濃いしっかりとした音になるのです。
さらに、息を吐く量をミリ単位で調節できるため、ささやくような繊細な表現から、パワフルな高音まで自由自在に操ることができます。この息のコントロール能力の差が、そのまま「声の質」の差として現れていると言えるでしょう。
言葉の輪郭がはっきりする「滑舌と母音」
意外と見落とされがちなのが、滑舌や母音の作り方です。歌が上手い人は、一つひとつの言葉をはっきりと発音しながらも、メロディの流れを止めない滑らかさを持っています。特に「ア・イ・ウ・エ・オ」の母音の形が整っているため、どの音域でも声のトーンが一定に保たれます。
滑舌が悪いと、何を歌っているのか聞き取りにくいだけでなく、声そのものがこもって聞こえてしまいます。歌が上手い人は、舌や唇の動きが非常に柔軟で、無駄な力が入っていません。これにより、言葉の立ち上がりが速くなり、リズム感も良く聞こえるようになります。
また、母音を丁寧に響かせることで、声に感情が乗りやすくなります。聴き手は、言葉の意味がストレートに伝わってくることで、その人の声を「表現力が豊かで素晴らしい声だ」と認識するようになります。言葉を大切にする姿勢が、声の良さを引き立てているのです。
声の良さを決める「共鳴」のメカニズムを紐解く

「声が違う」という印象の正体は、その多くが「共鳴」によるものです。人間の体はそれ自体が楽器のような構造をしており、どこを響かせるかによって声のキャラクターが大きく変わります。ここでは、主要な3つの共鳴について詳しく解説します。
【主な共鳴腔の種類】
・咽頭共鳴(いんとうきょうめい):喉の奥の空間。声に太さと深みを与える。
・口腔共鳴(こうくうきょうめい):口の中の空間。言葉の明瞭さを左右する。
・鼻腔共鳴(びくうきょうめい):鼻の奥の空間。声に明るさと高音の響きを与える。
喉の空間を広げる「咽頭共鳴」の効果
咽頭共鳴は、声帯のすぐ上にある「咽頭(いんとう)」という空間を広げることで得られる響きです。歌が上手い人が深みのある太い声を出せるのは、この咽頭をリラックスさせて空間を確保しているからです。あくびをする時のように喉の奥が下がった状態をイメージすると分かりやすいでしょう。
この共鳴が使えるようになると、声に落ち着いた響きが加わります。逆に喉が閉まっていると、声が平べったく、窮屈な印象になってしまいます。ボイストレーニングにおいて「喉を開く」と言われるのは、主にこの咽頭共鳴を最大限に活用するためです。
咽頭共鳴をマスターすると、マイク乗りが非常に良くなります。スピーカーから聞こえる自分の声が、まるでプロのような重厚感を持つようになるため、歌うこと自体が楽しくなるはずです。深みのある声は、聴き手に安心感と感動を与える大きな武器になります。
鼻腔共鳴で高音に輝きを与える
高音が綺麗に出る人とそうでない人の違いは、鼻腔共鳴(びくうきょうめい)が使えているかどうかにあります。鼻腔は鼻の奥にある空洞で、ここに声を当てるように意識すると、声に金属的な輝きや「抜けの良さ」が加わります。特に、現代のポップスやロックでは欠かせない要素です。
鼻腔共鳴を上手く使うと、無理に声を張り上げなくても、高い音が楽に響くようになります。いわゆる「ミックスボイス」と呼ばれる発声法においても、この鼻腔への響きは非常に重要な役割を果たします。声が鼻に抜ける感覚を掴めると、高音域での歌唱が驚くほどスムーズになります。
ただし、鼻声になりすぎないように注意が必要です。適切なバランスで鼻腔を響かせることで、透明感のある明るい歌声が手に入ります。歌が上手い人は、曲の雰囲気に合わせて、この鼻への響き具合を絶妙にコントロールしています。
胸腔共鳴で中低音に深みを出す
胸腔共鳴(きょうくうきょうめい)は、胸のあたりに響きを感じる発声法で、主に低音から中音域で使われます。実際に胸の中に空洞があるわけではありませんが、声の振動が胸に伝わることで、豊かで包み込むような低音を生み出します。バラードやジャズなどで、渋く温かみのある声を出したい時に効果的です。
この響きが加わると、声に説得力が増します。歌が上手い人は、低音域でも声が埋もれることなく、しっかりと響かせることができます。これは、胸から喉、そして口へと続く響きのラインを繋げているからです。どっしりとした土台のある声は、聴き手の心に深く響きます。
胸腔共鳴を意識しすぎると声が重くなりすぎることもありますが、適度に取り入れることで、歌声の表現の幅が格段に広がります。自分の体全体を鳴らすような感覚を持つことが、魅力的な歌声を作るための第一歩となります。
歌声が劇的に変わる「呼気」と「声帯」のコントロール

声の「質」を作るのが共鳴だとすれば、声の「エネルギー」を作るのは呼吸と声帯のコントロールです。歌が上手い人と声が違うのは、このエネルギー効率が圧倒的に優れているからです。プロがどのように声を生み出しているのか、その内側に迫ります。
腹式呼吸で声を支える本当の意味
「歌には腹式呼吸が大切」とよく言われますが、その本当の目的は「息を吐く力を一定に保つこと」にあります。お腹の筋肉を使って横隔膜(おうかくまく)をコントロールすることで、肺から出ていく空気のスピードと量を安定させます。これが「息の支え」と呼ばれる状態です。
歌が上手い人は、この支えが非常に強固です。そのため、長いフレーズでも声がフラつかず、最後までエネルギーを維持したまま歌い切ることができます。また、支えがあることで喉への負担も軽減されます。喉の筋肉に頼らずに声を出せるため、長時間歌っても声が枯れにくいというメリットもあります。
腹式呼吸ができるようになると、声の立ち上がりが良くなり、アクセントも自由自在につけられるようになります。力強い声は喉で作るのではなく、お腹からの息の圧力で作るもの。この感覚が掴めると、あなたの声のパワーは格段にアップするでしょう。
声帯閉鎖のバランスで声の質感を整える
声の正体は、喉にある「声帯(せいたい)」という2枚のヒダが振動することによって生まれます。この声帯をどのくらい閉じるかという「声帯閉鎖(せいたいへいさ)」の加減が、声の質感を決定づけます。歌が上手い人は、この閉鎖のバランスが絶妙です。
声帯が適度に閉じていると、息が効率よく音に変換され、芯のあるクリアな声になります。逆に閉鎖が弱いと、息が漏れた「ウィスパーボイス」になります。プロは、曲の切ない部分ではあえて閉鎖を弱めて息を混ぜ、力強いサビではしっかりと閉じてパワフルな声を出すといった使い分けをしています。
このコントロールができるようになると、一本調子の歌い方から卒業できます。声の「密度の濃淡」を操ることで、聴き手を飽きさせないドラマチックな歌唱が可能になるのです。声帯を痛めない程度に適切な閉鎖を保つ練習は、ボイトレにおいて非常に重要です。
息漏れを防いで芯のある声を作る
初心者に多い悩みの一つが「声がスカスカして、すぐに息が切れてしまう」というものです。これは、声帯の閉じ方が不十分で、無駄な息が大量に漏れ出していることが原因です。歌が上手い人の声が違うと感じる大きな要因の一つは、この息漏れがない「密閉度の高い声」にあります。
息漏れがない声は、小さな音量でもマイクによく通ります。また、息の消費量が少ないため、ロングトーン(長く声を伸ばすこと)も余裕を持って行えます。芯のある声を作るには、声帯をピタッと閉じる感覚と、それを維持するための安定した呼気圧の両方が必要です。
トレーニングを積むと、喉を締め付けることなく、効率的に声帯を振動させることができるようになります。これにより、透明感がありながらも力強い、理想的な歌声へと近づいていきます。息を音に変える効率を最大化することが、魅力的な声を作る秘訣です。
魅力的な声を手に入れるためのボイストレーニング実践編

歌が上手い人のような声を手に入れるためには、日々の具体的なトレーニングが欠かせません。ここでは、自宅でも手軽に取り組める、声の質を変えるための効果的なエクササイズを紹介します。継続することで、少しずつ自分の声が変化していくのを実感できるはずです。
リップロールとタングトリルの驚くべき効果
ボイトレの定番であるリップロール(唇をプルプル震わせること)とタングトリル(巻き舌)は、声のウォーミングアップだけでなく、発声のバランスを整えるのに非常に効果的です。これを行うことで、喉のリラックスと呼吸の安定を同時に養うことができます。
リップロールをすると、呼気の圧力が一定になります。また、口先が細かく震えることで、喉の余計な力が抜けやすくなります。この状態で歌のメロディをなぞる練習をすると、実際の歌唱でもスムーズに発声できるようになります。歌が上手い人の多くが、本番前に必ずと言っていいほど行っている基礎練習です。
タングトリルは、舌の柔軟性を高め、滑舌の改善に繋がります。どちらの練習も、途中で途切れないように長く続けることがポイントです。まずは10秒以上、安定して続けられるように毎日少しずつ練習してみましょう。声の立ち上がりが驚くほど楽になります。
ハミングで自分の響くポイントを探す
自分の声がどこで響いているかを確認するには、ハミング(鼻歌)が最適です。口を閉じて鼻から声を出すことで、鼻腔や頭部への共鳴をダイレクトに感じることができます。ハミングをした時に、鼻のあたりや唇のあたりがムズムズと振動していれば、共鳴が上手くいっている証拠です。
この練習のポイントは、喉をリラックスさせたまま、響きを前に持ってくる感覚を掴むことです。ハミングでの響きを維持したまま、ゆっくりと口を開けて母音に繋げてみましょう。ハミングの時の「心地よい響き」がそのまま歌声に乗るようになると、声の通りが劇的に良くなります。
ハミングは大きな声を出さなくても練習できるため、場所を選ばずに行えるのもメリットです。自分にとって最も美しく響くポイント、いわゆる「共鳴のスイートスポット」を探す旅は、歌唱力向上のための大きな一歩となります。
姿勢と表情筋が声に与える影響
声は体という楽器から奏でられるものです。そのため、姿勢が悪ければ、いくら技術があっても良い声は出ません。猫背になると胸が圧迫されて呼吸が浅くなり、喉も締まりやすくなります。背筋をすっと伸ばし、頭を空から一本の糸で吊るされているようなイメージで立つのが理想的です。
また、表情筋の使い方も重要です。顔の筋肉が固まっていると、口の中の空間が十分に確保できず、声がこもってしまいます。特に、頬の筋肉(笑筋)を軽く持ち上げるように意識すると、声が明るくなり、高音も出やすくなります。歌が上手い人の顔をよく見ると、表情が非常に豊かで、口がしっかりと動いていることに気づくはずです。
歌う前に顔をマッサージしたり、大きく口を動かして「あ・い・う・え・お」と言ってみるだけでも、声の出方は変わります。体と顔、両方のコンディションを整えることが、質の高い発声への近道です。
姿勢をチェックする際は、壁に背中をつけて立ってみてください。後頭部、肩甲骨、お尻、かかとの4点が壁についている状態が、発声に最適な真っ直ぐな姿勢の目安です。
自分の声を「歌が上手い人の声」へ育てるステップ

技術を学ぶだけでなく、自分の声を客観的に捉え、育てていくプロセスも大切です。多くの人が陥りがちな「自分の声が嫌い」という壁を乗り越え、唯一無二の魅力的な声を作り上げるためのステップをご紹介します。
録音して自分の声を客観的に分析する
自分が聴いている自分の声(骨導音)と、他人が聴いている自分の声(気導音)には大きな違いがあります。まずは、自分の歌声を録音して聴く習慣をつけましょう。最初は違和感があるかもしれませんが、これこそが「周りから聞こえている本当の声」です。
録音を聴くときは、以下のポイントをチェックしてみてください。
| チェック項目 | 分析のポイント |
|---|---|
| 音程の安定感 | フラフラしたり、ズレたりしていないか |
| 声の響き | 声がこもっていないか、細すぎないか |
| 言葉の明瞭さ | 歌詞がはっきりと聞き取れるか |
| 息継ぎの音 | 不自然に大きく、苦しそうになっていないか |
客観的に分析することで、修正すべき課題が明確になります。「思っていたより声が薄いな」と感じたら共鳴の練習を重点的に行うなど、自分専用のトレーニングプランが見えてきます。この地道なフィードバックの繰り返しが、声を磨き上げます。
憧れのアーティストの「声の出し方」を観察する
歌が上手い人と声が違う理由をさらに深く理解するために、好きなアーティストの歌い方を徹底的に観察してみましょう。単に歌真似をするのではなく、「どこで息を吸っているか」「どんな表情で高音を出しているか」「口の開け方はどうか」といった、体の使い方の細部に注目します。
プロの歌唱映像をスロー再生してみると、意外な発見があるはずです。例えば、高音を出す瞬間に少しだけ喉の奥が広がっているのが見えたり、フレーズの語尾で繊細なビブラートをかけながら声を抜いている様子が分かったりします。これらのテクニックを自分の声で試してみることは、非常に有効な学びになります。
自分に似た声質のアーティストをお手本にすると、上達のスピードが上がります。憧れの人の「声の質感」を分析し、それに近づけるためのアプローチを繰り返すことで、あなたの声にはプロのエッセンスが少しずつ溶け込んでいくでしょう。
自分の音域(レンジ)に合った曲選び
どんなに素晴らしい声を持っていても、自分に合っていない音域の曲を歌っていては、その魅力は発揮されません。歌が上手い人は、自分の声が最も輝く音域、つまり「おいしい音域」を熟知しています。まずは自分の音域を正しく把握し、無理なく綺麗に出せる曲から選んでみましょう。
無理に高い曲に挑戦しすぎると、喉を痛めたり、変な癖がついたりする原因になります。逆に、自分のレンジに合った曲を余裕を持って歌うことで、響きや表現力に意識を向ける余裕が生まれます。その結果、周囲からは「歌が上手い」「声が良い」と評価されるようになります。
基礎が固まってくれば、少しずつ音域を広げていくことが可能です。まずは今の自分の声を最大限に活かせるステージを見つけること。それが自信に繋がり、結果として声そのものの魅力も向上していくのです。焦らず、自分の声を育てる時間を楽しみましょう。
まとめ:歌が上手い人と声が違う理由を知ればあなたの声も必ず変わる
歌が上手い人と自分の声が違うと感じる背景には、共鳴の使い方、呼吸の安定、そして声帯の絶妙なコントロールといった、明確な技術的根拠があります。プロのような魅力的な声は、決して生まれ持った才能だけで決まるものではありません。正しい知識を持ち、適切なトレーニングを重ねることで、誰でも自分の声を理想的な「楽器」へと変えていくことができます。
まずは自分の喉をリラックスさせ、あくびのような広い空間を意識することから始めてみてください。そして、日々のリップロールやハミングを通じて、自分の中に眠っている美しい響きを探していきましょう。自分の声を客観的に聴き、一歩ずつ改善していくプロセスそのものが、あなたを素晴らしいシンガーへと導いてくれます。
声が違うのは、伸びしろがある証拠です。この記事で紹介したメカニズムを意識しながら、日々の練習に取り組んでみてください。ある日、録音した自分の声を聴いたときに「あ、今までと声が違う!」と驚く瞬間が必ず訪れるはずです。あなたの声が持つ本来の可能性を信じて、ぜひ一歩踏み出してみてください。




