日本を代表するボーカルデュオであるコブクロ。その圧倒的な声量と美しいハーモニーは、長年多くの人々を魅了してきました。しかし、最近インターネット上やSNSでは「コブクロの歌唱力は落ちたのではないか」という声が聞かれることもあります。ファンの方にとっては、大好きなアーティストの変化は非常に気になるトピックですよね。
歌声は繊細な楽器と同じです。年齢を重ねることによる肉体的な変化や、過去に抱えた喉の不調、さらには表現スタイルの進化など、声が変わる理由は一つではありません。本記事では、ボイストレーニングの視点から、なぜそのように感じられるのか、実際の喉のトラブルや発声の変化について詳しく紐解いていきます。
この記事を読むことで、コブクロの二人が歩んできた音楽的な軌跡と、現在の彼らが放つ歌声の深みをより深く理解できるようになるはずです。それでは、専門的な知見を交えながら、彼らの歌声の変化について解説していきましょう。
コブクロの歌唱力が落ちたと感じられる背景にある喉のトラブル

コブクロの歌声に変化を感じる最大の要因として、過去に二人が経験した深刻な喉のトラブルが挙げられます。特にメインボーカルを務める黒田俊介さんと、コーラスとギターを担当する小渕健太郎さんは、それぞれ異なる時期に喉の不調を抱え、一時は活動休止を余儀なくされたこともありました。
プロの歌手にとって、喉はまさに命とも言える場所です。長年の過酷なツアーやレコーディングによる酷使は、どれほど正しい発声法を身につけていても、避けられないダメージを蓄積させることがあります。ここでは、彼らが直面した具体的な症状とその影響について見ていきましょう。
黒田俊介さんを襲った「発声時頸部ジストニア」の影響
黒田さんの歌声の変化を語る上で避けて通れないのが、「発声時頸部ジストニア」という病気です。ジストニアとは、脳からの指令がうまく伝わらず、自分の意志とは無関係に筋肉が収縮したり固まったりしてしまう神経疾患の一種です。発声時に首の筋肉が異常に緊張してしまうため、思い通りに声を出すことが困難になります。
ボイトレの観点から見ると、発声の土台となる「リラックス」が強制的に損なわれる状態です。黒田さんのような圧倒的なパワーを持つシンガーにとって、自分の体が思うように動かないもどかしさは計り知れなかったでしょう。この症状により、以前のような突き抜けるような高音や、安定したロングトーンを出す際に、体への負担が非常に大きくなっていると考えられます。
ジストニアを抱えながら歌い続けるには、これまでの発声法を根本から変え、新しい体の使い方を習得する必要があります。現在の黒田さんの歌い方が、以前よりも少し苦しそうに見えたり、声質が変わったように感じられたりするのは、この困難な病と向き合い、克服しようとしている証でもあります。
小渕健太郎さんが経験した「発声障害」と活動休止の経緯
一方、小渕さんも2011年に「発声障害」を理由に活動休止を発表しています。小渕さんの場合、高音を出そうとすると喉が締まってしまう、あるいは声がかすれるといった症状に悩まされていました。コブクロの楽曲は非常にキーが高く、特に小渕さんのコーラスパートはテナーの限界に近い音域が連続します。
小渕さんは作詞作曲も担当しており、グループを牽引するプレッシャーや責任感も非常に強い方です。精神的なストレスや肉体的な疲労が、声帯を動かす繊細な筋肉に過度な緊張を与えてしまった可能性があります。活動休止期間を経て復帰されましたが、喉への負担を考慮して、ライブでの歌い方やアレンジに工夫が見られるようになりました。
復帰後の小渕さんの声は、以前のクリアなハイトーンとは少し異なり、ハスキーさが増したり、よりエモーショナルな響きを重視したりするスタイルへと変化しています。これは「歌唱力が落ちた」というよりも、喉の状態に合わせた最適な歌唱法を模索した結果と言えるでしょう。
長年のライブ活動による声帯へのダメージと回復過程
コブクロは路上ライブからスタートし、長年ライブを活動の主軸に置いてきたアーティストです。年間を通して全国を回るハードなスケジュールは、知らず知らずのうちに声帯を摩耗させます。声帯に結節(ペンだこのようなもの)やポリープができる一歩手前の状態が続くことも珍しくなかったはずです。
声帯の筋肉も加齢とともに変化します。若い頃のような「力任せの勢い」だけではカバーしきれない部分が出てくるため、キャリアを積んだアーティストは必ず「発声の転換期」を迎えます。コブクロの二人も、まさにその過渡期にあり、現在の喉の状態にベストな響きを探し続けている最中なのです。
メインボーカル黒田俊介さんの声質の変化をボイトレ視点で分析

黒田俊介さんの歌声は、かつて「世界に一つだけの宝物」と称されるほど、力強くも繊細な響きを持っていました。しかし、近年はその声質が太くなり、響きのポイントが低くなったように感じるファンも多いようです。これはボイトレ的な視点で見ると、単なる劣化ではなく「肉体の変化」と「技術的な対応」の両面から説明がつきます。
身長193cmという恵まれた体格を持つ黒田さんは、もともと共鳴腔(声を響かせる空間)が非常に大きいため、低音から中音域にかけての響きは圧巻です。その声がどのように変化していったのか、詳しく分析してみましょう。
低音域の深みが増したことによる高音域への影響
年齢を重ねると、多くの男性歌手の声は徐々に低く、太くなる傾向があります。これは声帯を動かす筋肉の柔軟性が変化し、より豊かな中低音が出やすくなるためです。黒田さんも例外ではなく、近年の楽曲では以前にも増して重厚感のある低音を聴かせてくれます。
しかし、低音域を太く出す技術に偏りすぎると、高音域を出す際に必要なしなやかさが失われることがあります。ボイトレ用語で言う「重い発声」になりやすく、以前のような軽やかで鋭いハイトーンが出しにくくなる現象です。これが、一部のリスナーに「高音が出なくなった=歌唱力が落ちた」と誤解される一因となっています。
実際には、黒田さんはより深い響きを手に入れた代わりに、若い頃の鋭いエッジを少し手放した状態と言えます。これはシンガーとしての成熟プロセスの一つであり、オペラ歌手などの世界でもよく見られる変化です。
喉を保護するための発声法のシフトと響きの位置
前述のジストニアの影響もあり、黒田さんは喉に極端な負担をかけない発声法へとシフトしています。以前は喉の奥を大きく開けてストレートに声をぶつけるような力強いスタイルが目立ちましたが、現在はより体全体の共鳴を使い、効率よく声を響かせるスタイルに変化しています。
具体的には、鼻腔(鼻の奥)の響きをより意識したり、ミックスボイスの比率を高めたりすることで、声帯への直接的な衝撃を和らげている様子が見て取れます。この変化により、声に「まろやかさ」や「哀愁」が加わりました。以前のキレを求める耳には物足りなく映るかもしれませんが、持続可能な歌唱という点では正しい進化です。
また、マイクの使い方も以前より繊細になっています。声のダイナミクス(強弱)を喉だけでコントロールするのではなく、マイクとの距離を調整しながら表現の幅を広げています。これはベテランならではのテクニックと言えるでしょう。
加齢に伴う声帯の変化と筋肉のコントロール
40代、50代と年齢を重ねるにつれ、声帯の水分量は減り、周囲の筋肉も衰え始めます。これを防ぐには日々のトレーニングが不可欠ですが、それでも20代の頃と全く同じ状態で声を出すことは不可能です。黒田さんの場合も、声帯の閉鎖(声を出す時に左右の声帯が合わさること)に、より多くのエネルギーを必要とするようになっている可能性があります。
ボイトレの現場でも、加齢による「声の揺れ(ビブラートが不安定になる現象)」に悩む生徒さんは多いです。黒田さんの歌唱にも、時折コントロールが難しそうな場面が見受けられますが、それを持ち前のセンスと魂の歌唱でカバーしています。完璧なコントロールよりも、その瞬間に出せる最高の声を届けようとする姿勢が、現在の黒田さんの魅力になっています。
黒田さんの声の変化は、いわば「楽器の素材が変わった」ようなものです。バイオリンがチェロに近づいたような変化であり、奏でる音楽の深みが増していることは間違いありません。
小渕健太郎さんの歌声とコーラスに起きた変化

小渕健太郎さんは、コブクロの楽曲制作の要であり、あの美しいハーモニーの立役者です。ギターを弾きながら複雑なコーラスラインを歌い、時には主旋律を上回るほどの熱量で歌い上げる彼のスタイルは、非常に高い技術を要します。しかし、小渕さんの歌声についても、近年は「声が震えている」「音程が不安定な時がある」といった指摘がなされることがあります。
小渕さんの声の変化には、彼特有の役割と、過去の喉の疾患が深く関わっています。どのような変化が起きているのか、専門的に見ていきましょう。
2011年の活動休止と喉の不調の経緯
2011年、小渕さんは「発声障害」により半年間の休養に入りました。当時、半年以上前から高い声が出しにくい状態が続いていたそうです。小渕さんのパートは、常に黒田さんのパワフルなメインボーカルに寄り添い、さらにその上を突き抜けるような高音を要求されます。このバランスを維持するために、小渕さんは常に喉をフル稼働させていたと考えられます。
発声障害の主な原因は、「声帯の酷使」と「心因的な緊張」の両面にあることが多いです。繊細な感覚を持つ小渕さんにとって、完璧なハーモニーを追求するあまり、喉の筋肉に「癖」がついてしまい、スムーズな発声ができなくなった時期がありました。復帰後も、この時期に付いた癖や喉の過敏さと戦いながら歌い続けています。
現在の小渕さんの歌唱に見られる「絞り出すような発声」や「独特のビブラート」は、当時の後遺症という側面もありますが、同時にそれを表現の一部として昇華させているようにも感じられます。かつての安定感とは異なる、危ういまでの情熱が今の彼の持ち味です。
ハイトーンパートの出し方の変化と音域の推移
全盛期の小渕さんは、非常にクリアで伸びやかなハイトーンが特徴でした。しかし近年は、そのハイトーンを出す際に少し「苦しさ」が混じることがあります。これは、加齢によって声帯を伸ばす筋肉(輪状甲状筋)の柔軟性が低下していることが一因かもしれません。
ボイトレ的な対策として、小渕さんは地声に近い強い高音から、よりファルセット(裏声)に近い「ヘッドボイス」を多用するスタイルへとシフトしている場面も見受けられます。これにより、喉への直接的なダメージを避けつつ、高音の響きを維持しようとしています。音程のフラつきが見られるのも、この新しい発声バランスを微調整している過程で起こる現象だと推測されます。
また、最近の楽曲では小渕さんのソロパートでも、以前ほど無理な高音設定にしないなどの配慮が見られます。これはセルフプロデュース能力の現れであり、長く歌い続けるための賢明な選択です。
ギタリスト兼ボーカリストとしての負担と姿勢
小渕さんは歌いながらギターを弾くスタイルが基本です。実は、複雑なギタープレイをしながら完璧な発声を維持するのは、想像以上に困難なことです。ギターを弾くために腕や肩に力が入ると、その緊張は連動して喉や首の筋肉にも伝わります。これを「筋連鎖」と呼びます。
特にアコースティックギターをかき鳴らしながら歌う際、小渕さんの姿勢は少し前かがみになったり、首に力が入ったりしがちです。これが発声を不安定にする要因の一つとなります。しかし、あの情熱的なパフォーマンスこそがコブクロのライブの醍醐味であり、技術的な正解(=リラックスした姿勢)を犠牲にしてでも、熱量を優先しているのが現在のスタイルと言えるでしょう。
小渕さんの歌唱の変化まとめ
・発声障害を乗り越え、現在は喉のケアを最優先にした歌い方へ。
・高音域はパワーで押すのではなく、テクニックで響かせる方向へ転換。
・ギター演奏との兼ね合いで生じる緊張を、エモーショナルな表現に変えている。
ライブパフォーマンスにおける「歌唱力」の捉え方

「歌唱力」という言葉には、音程の正確さや声量だけでなく、表現力や伝える力も含まれます。CD音源とライブパフォーマンスを比較して「歌唱力が落ちた」と判断するのは、少し早計かもしれません。特にコブクロのような実力派デュオの場合、ライブでは音源とは異なる意図で歌い方を変えていることも多いのです。
ここでは、私たちがライブで感じる「違和感」の正体と、プロがライブで何を重視しているのかについて掘り下げていきます。
CD音源とライブでの歌唱スタイルの違い
レコーディングでは、何度もテイクを重ね、最高の状態の声を繋ぎ合わせることができます。ピッチ補正技術も進歩しているため、音源は「完璧な理想形」としてパッケージされます。しかし、ライブは一発勝負の生ものです。体調や会場の音響環境、ファンの熱気によって声の状態は刻一刻と変化します。
コブクロの二人は、ライブにおいて「音程の正確さよりも、その場のパッション」を重視する傾向があります。音源通りにきれいに歌うことよりも、観客の心に届けるために声を荒らげたり、タメを作ったり、フェイクを入れたりします。この自由度の高い歌唱が、一部の人には「崩れて聞こえる」原因になっている場合があります。
また、ライブ会場では大きな音に負けないよう、どうしても喉を強く鳴らす発声になりがちです。これにより、音源のような繊細なニュアンスよりも、力強さが前面に出るため、声質が変わったように感じられることもあります。
感情表現の深化と技術的な正確さのバランス
若い頃のコブクロは、その圧倒的な「上手さ」で聴衆をねじ伏せるようなパワーがありました。しかし、キャリアを重ねた現在の彼らは、歌詞の一言一言に重みを乗せる「表現」に重きを置いています。たとえ声がかすれたとしても、そこに感情が乗っていれば良しとする、ソウルフルなアプローチです。
ボイトレの究極の目的は、歌い手の感情を声に乗せて届けることです。技術はあくまでそのための手段に過ぎません。現在のコブクロは、技術的な完璧さを少し崩してでも、より深い人間性や切なさを表現しようとしているように見えます。これは「衰え」ではなく、表現者としての「円熟」と捉えるべき変化です。
特に「蕾」や「桜」といった名曲を歌う際、以前よりもずっと丁寧に、噛み締めるように歌う彼らの姿に、多くのファンは技術以上の感動を覚えているのではないでしょうか。
ファンが感じる「全盛期」とのギャップの正体
多くの人が「全盛期」としてイメージするのは、おそらく2000年代中盤から後半にかけての、最も勢いがあった時期でしょう。その頃の鮮烈な記憶と比較してしまうと、どうしても現在の声にギャップを感じてしまいます。これは人間の記憶が「最も良かった瞬間」を美化して保存しているためです。
しかし、アーティストは常に現在進行形です。過去の自分をなぞるのではなく、今の声で何ができるかを模索し続けるのが本物のプロです。コブクロの二人は、自分たちの喉の限界や変化を誰よりも自覚し、その上で今の自分たちにしか出せない「最高の響き」を追求しています。このギャップこそが、彼らが生きている証でもあります。
ライブでの変化を「劣化」と捉えるか、「ライブ感」と捉えるかは聴き手の自由です。しかし、彼らが今もなお、ステージで命を削るように歌っている事実は、歌唱力の数値化できない価値を示しています。
プロが教える「声の衰え」を防ぎ回復させるための方法

コブクロの事例から学べることは、プロの歌手であっても喉のトラブルや加齢による変化は避けられないということです。しかし、適切なケアとトレーニングを行えば、声の魅力を維持し、変化に適応していくことは十分に可能です。ボイトレの視点から、声の健康を守るための具体的なポイントを解説します。
皆さんが普段歌う際にも役立つ、喉をいたわりながら歌唱力を高めるコツをまとめました。これらを知ることで、コブクロの二人が行っているであろう努力の裏側も想像できるはずです。
喉のケアと加齢に負けない筋肉維持
声の若々しさを保つためには、まず声帯の潤いを保つことが最優先です。乾燥は声帯にとって最大の敵です。吸入器の使用や、こまめな水分補給、さらには部屋の湿度管理など、徹底したケアが必要です。プロのシンガーの多くは、寝る時もマスクを着用するなど細心の注意を払っています。
次に重要なのが、「インナーマッスルの維持」です。声を出すために必要な腹筋や横隔膜、そして喉周りの深層筋は、意識的に鍛えないと衰えてしまいます。ただし、筋トレのように重い負荷をかけるのではなく、呼吸法(腹式呼吸)を中心とした、柔軟性を高めるトレーニングが効果的です。しなやかな筋肉があれば、加齢による声の変化を最小限に抑えられます。
また、声を出す前のウォーミングアップと、歌った後のクールダウンも欠かせません。ハミングやリップロール(唇をプルプル震わせる練習)などで喉をリラックスさせる習慣をつけることが、喉の寿命を延ばす秘訣です。
ライフスタイルに合わせた発声スタイルの確立
今の自分に合わない無理な歌い方を続けることは、喉への「前借り」をしているようなものです。若い頃のキーにこだわって喉を締め付けて歌うよりも、必要であればキーを下げたり、アレンジを変えたりして、自分の「今のベストな響き」を探すことが大切です。
ボイトレでは、自分の声帯のタイプ(長さや厚さ)に合った発声法を学びます。例えば、声帯が薄い人はヘッドボイスを活かしたスタイル、厚い人はチェストボイスの深みを活かしたスタイルといった具合です。コブクロの黒田さんも、自分の声の厚みを最大限に活かせる現在のスタイルを、ボイトレを通じて再構築してきたのだと考えられます。
無理をせず、自分の楽器のポテンシャルを最も引き出せるポイントを熟知すること。これが、長く歌い続けるプロフェッショナルの共通点です。
メンタルケアが歌声に与える大きな影響
喉は非常に精神的な影響を受けやすい器官です。「声が出なかったらどうしよう」という不安は、喉の周りの筋肉を無意識に硬直させます。小渕さんが経験したような発声障害の多くは、メンタル面でのリラックスが回復の鍵を握ります。
ボイストレーニングは、単なる技術指導だけでなく、歌い手の自信を育てる場でもあります。自分の声を認め、今の状態を受け入れることで、無駄な力が抜け、声は再び響き始めます。コブクロの二人が活動休止を経て復帰した際、その歌声には以前よりも「迷い」が消え、ある種の開き直りにも似た力強さが宿っていました。心の健康が、そのまま声の輝きに直結しているのです。
コブクロが現在も多くの人を魅了し続ける理由

「コブクロの歌唱力が落ちた」という意見がある一方で、彼らのコンサートは常に超満員であり、新曲がリリースされれば多くの人の心に深く刺さります。もし本当に「歌唱力」という技術的な要素だけが魅力であれば、これほど長く第一線で活躍し続けることは不可能です。彼らには、技術を超えた圧倒的な魅力が存在します。
最後に、声が変わった今だからこそ感じられる、コブクロの真の魅力について考察します。彼らがなぜ愛され続けるのか、その理由を探っていきましょう。
変化を受け入れた新しいコブクロの魅力
かつてのコブクロは、どこまでも届くようなハイトーンと完璧なハモリが代名詞でした。しかし現在の彼らは、声の揺れや、時にはかすれるような響きさえも、歌のストーリーの一部として取り込んでいます。これは、自分たちの「完璧ではない部分」を隠さず、ありのままをさらけ出す強さを手に入れたということです。
ボイトレの視点でも、隙のない完璧すぎる歌唱よりも、少しの「不完全さ」がある方が聴き手の共感を呼びやすいことがあります。現在の二人の歌唱には、人生の苦労や葛藤を乗り越えてきた者だけが持つ、圧倒的な説得力が宿っています。その深みは、若い頃の彼らには出せなかったものです。
ファンは、彼らが喉の不調と戦い、それでもステージに立ち続ける姿に勇気をもらっています。歌唱の変化は、彼らが戦い続けている勲章のようなものなのです。
歌詞とメロディに込められたメッセージ性
コブクロの最大の武器は、やはり小渕さんが生み出す楽曲の力です。等身大の言葉で綴られる歌詞は、世代を超えて多くの人の心に寄り添います。そして、そのメッセージを最も深く理解し、表現できるのは、他でもない小渕さんと黒田さんの二人だけです。
歌唱力が変化したとしても、楽曲の持つ本質的な力は変わりません。むしろ、年齢を重ねた今の彼らが「卒業」や「再会」、あるいは「永遠」について歌うとき、その言葉の一つ一つがより重層的な意味を持って響きます。技術的な正確さを超えて、歌が持つ「魂」を届ける力が、彼らには備わっています。
メロディラインも、今の二人の声が最も美しく重なるように計算されています。長年のコンビネーションから生まれる、阿吽の呼吸によるハーモニーは、技術を超えた芸術の域に達しています。
歌唱力という枠を超えた表現力
結局のところ、私たちがアーティストに求めているのは「CDと同じ音程で歌うこと」だけではありません。その歌声を通じて、どれだけ心が動かされるか、どれだけ新しい景色が見えるかという「表現力」こそが重要です。コブクロは、その点において今もなお進化を続けています。
黒田さんの深いブレス(息遣い)一つ、小渕さんの震えるような高音一つに、言葉以上の感情が込められています。これは、単純な「歌唱力」という物差しでは測れない価値です。彼らは、喉の状態に合わせて戦い方を変え、より高度な表現のステージへと進んでいます。
| 要素 | 全盛期の魅力 | 現在の魅力 |
|---|---|---|
| 声質 | 突き抜けるような輝き | 重厚感と深み、哀愁 |
| テクニック | 圧倒的なパワーと正確性 | 繊細な表現力と効率的な発声 |
| ハーモニー | 完璧に重なる美しい和音 | 二人の歩みが重なるエモーショナルな響き |
コブクロの歌唱力に関する変化とこれからの期待
コブクロの歌唱力について、「落ちた」と感じるか「進化した」と感じるかは、何を重視するかによって異なります。確かに、かつての圧倒的な高音や安定感には変化が見られます。しかし、その背景にはジストニアや発声障害という過酷な試練があり、それを乗り越えてなおステージに立ち続ける彼らの情熱があります。
ボイトレの視点から見れば、彼らは肉体の変化や不調に対して、非常に真摯に向き合い、今の自分たちにできる最高のパフォーマンスを模索し続けています。声の変化は、単なる衰えではなく、新しい表現を手に入れるためのプロセスです。低音域の深みが増した黒田さんと、苦悩を乗り越えてエモーショナルさを増した小渕さんのハーモニーは、今だからこそ聴ける唯一無二のものです。
技術的な完璧さを求めるのも音楽の一つの楽しみ方ですが、アーティストが刻んできた歴史や、その時々の声に宿る想いを受け取ることも、音楽の醍醐味ではないでしょうか。コブクロの二人は、これからも変わりゆく自分たちの声と共に、新しい歌を届けてくれるはずです。私たちは、そんな彼らの「今」の歌声に耳を傾け、その進化を温かく見守り続けていきたいものです。




